ロンドンで一軒だけのお店で売っているケーキ
皆様は、ロンドンではかなり有名なお店で売っている
「メイズ・オブ・オナー」というチーズケーキをご存じでしょうか。
カードチーズが主体の生地を、パイ生地の上に載せて焼いた
日本人の感覚からすると少し大きめのチーズタルトのようなお菓子になります。
但し、タルト生地ではなく、パイ生地にチーズ生地を載せて焼いているので、
サクサクとしていて美味です。
ダークな由来のチーズタルト
このお菓子は、ヘンリー8世という昔のイングランドの国王陛下の好物として知られております。
宮廷の侍女たちがおしゃべりをしながら食しているチーズタルトを、
この国王陛下が食べてみていたくお気に召されて、
「侍女たち(英語でメイズ・オブ・オナー)」という名前をつけられた、
という逸話が伝わっております。
ここまでならほほえましいとも言えるのですが、
ここからがこのケーキのダークな由来です。
このケーキを作った侍女はレシピを門外不出にするために監獄に入れられ、
一生このケーキを作る為に幽閉された、という話や、
このレシピを箱の中から見つけた当時侍女の一人だったアン・ブーリンというお人は、
王妃になれたものの無実の罪を負わされるはめになった、
等とダークな話題がつきまとうのです。
素朴でおいしいチーズタルト
とはいうものの、このケーキ自体はとても家庭的で素朴、
温かみのある味の、親しみやすいチーズタルトです。
カードチーズは日本では入手しにくいのですが、
前の投稿に筆者が書いたように、「水切りヨーグルト」で代用してもうまく行きます。
むしろ、あちこちで紹介されているカッテージチーズを使ったレシピよりおいしいのではないか、
とも筆者は思います。
北野佐久子先生のレシピを元にして、筆者は時々このタルトを作っております。
このお方のレシピには、小粒の干しブドウとあんずジャムが入っているのが要です。
凝った作り方になりますが、家庭的な温かみのある味です。
どこにお持ちしても、なかなか評判がよいお菓子です。
なお、「元祖メイズ・オブ・オナー」の看板を出しているお店一軒
がロンドンで今、このお菓子を販売しております。
そのほか、家庭でも似たようなレシピで気軽に作られています。
このレシピは準国家機密だったはずなのに、
どこから持ち出されてロンドンの街中で売られているのか、非常に不思議です。
チーズタルトの画像
その後のヘンリー8世
なお、このヘンリー8世という方は、
有名なチューダー朝最後の女王、エリザベス1世の御父君にあたります。
ヘンリー8世が亡くなった後、王位継承をめぐってイングランドは大混乱になりました。
前述したアン・ブーリン様との間のご息女、エリザべス一世陛下が即位するまでにも、
かなりのご苦労があったようです。
しかし、英国の黄金時代は、この方の即位から始まるとも言えます。
「メイズ・オブ・オナー」の見栄えがよい作り方
補足として、このケーキは焼きあがると中央がへこみますが、
チーズ生地を一晩冷蔵庫に入れて落ち着かせてから焼くと、真ん中がきれいに膨らみます。
これは、どのチーズケーキにも応用できる事なので、お試しください。
メイズ・オブ・オナータルト
元祖メイズ・オブ・オナーのお店