「銀」のカトラリーが普及した理由
銀で出来たスプーン、ナイフ、フォークがセットになった、
美しいヨーロッパのカトラリーセット。
素敵だと思います。
アンティークの繊細なカトラリーは、特に美しいものです。
昔のカトラリーデザイン画
しかし、皆様は「銀のカトラリー」がヨーロッパに普及した事情をご存じでしょうか。
実は、「悪質な伝染病」が、カトラリー普及の引き金の一つになっているのです。
昔のヨーロッパでは手で食べていた
大昔のヨーロッパでは、王族でも平民でも、
皆様が手を使って食事をしていた時代がありました。
その頃は、切り分け用のナイフやフォークは共用で使いまわされていて、
自分だけのカトラリーを使って食事をするのは、
「極度の贅沢病」として非難の対象でした。
また、手以外のものを使って食事をするのは「神への冒涜」と考える
宗教的背景があったようです。
伝染病が変えた食事様式
しかし、12世紀ごろに、ペストが大流行し、ヨーロッパでパンデミック状態になりました。
その時も、コロナ禍の時のように、医師や治療師たちが原因と予防法を必死で探していました。
その時に、感染症予防にはナイフとフォークを使いまわさないこと、
抗菌作用のある銀を使うこと、が考案されたようです。
「銀」素材に期待された毒殺防止効果
また、銀には当時毒殺に盛んに使われていた
「ヒ素」に黒く変色して反応する性質もあり、
これが貴族にはありがたいと思われました。
財産としてのカトラリー
今でもヨーロッパは「銀本位制」なため、
昔はスターリングシルバーで作られたカトラリーは
万一の時の「持ち逃げできる財産」ともなりました。
それでも、シャーロック・ホームズの時代あたりになるまで、
ヨーロッパ人全員がカトラリーで食事をするのが当たり前、には
なりませんでした。
「モンテ・クリスト伯爵」の舞台の時代には、平民はまだ手で食べていたようです。
貴族の宴会の折には、それぞれの招待客が自分のカトラリーを持ち込むのが普通でした。
レストランや宴席にカトラリーが備え付けられるようになったのは、
19世紀になってからです。
それゆえに、簡素で洗いやすいデザインの今のようなカトラリーが大量生産されて普及しているとも言えます。
現代風のカトラリーの画像
全世界的なパンデミックが起こった後の時代に、
世界各地の食習慣がどのように変化するのか、
またはもとに戻るのか、変化しないのか、
ある意味楽しみに見ていこうと思っております。
カトラリー類がセッティングされたレストランのテーブルの画像
カトラリーの歴史
https://www.craft-store.jp/features/reason-why-swelling-wine-glass
ぺストとカトラリーの歴史