THRILL SHOCK SUSPENSE #10
2023年12月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
探偵 神宮寺三郎シリーズ
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探偵 神宮寺三郎 未完のルポ
概要
探偵物のコマンド選択式アドベンチャーゲーム『神宮寺三郎』シリーズの5作目。
前作の「時の過ぎゆくままに」から6年の歳月を経て発売。これまでのFC・FCDでの作品から一世代飛び越えての次世代機(当時はPS/SS)対応ということで、ファン待望の一作であった。
シナリオ自体はファンによる持ち込みである。
これが切っ掛けとなり、シリーズ復活につながった。
キャラクターデザインはシリーズ恒例の寺田克也氏だが、ゲーム中のビジュアルには関与していない。
あらすじ
神宮寺探偵事務所に、どこかの鍵が同封された謎のエアメールが送られてくる。
差出人は、神宮寺の飲み仲間のジャーナリスト・池上康明。
意図のわからない突然の手紙に困惑する神宮寺だったが、後に池上が「とある新興暴力団」について調査していたと判明する。
時を同じくして、ムルソン共和国レムチャ村に滞在していた駆け出しのジャーナリスト・与野恭介は、日本のODAに端を発する環境破壊が引き起こした悲劇的な現実を目の当たりにしていた。そして与野は、ムルソン共和国と日本の間に存在する、もう一つの「黒い関係」について知る事となる。
探偵 神宮寺三郎 夢の終わりに
概要
ハードボイルドADV『神宮寺三郎』シリーズ6作目。
本作ではゲーム内のキャラ立ち絵やムービーシーンにも寺田克也の原画が使用されている。
シリーズ中で同氏の関わった部分が最も多い作品。
登場人物同士が複雑に絡み合った深みのあるシナリオと、それを彩る高品質なグラフィックやBGMが高い評価を得ている。ADVとしては申し分のない出来であり、作品の雰囲気を楽しむのを阻害する目立った問題点もない。
シリーズのウリであるハードボイルドADVのひとつの完成形として、後継作品と比較しても引けをとらない会心の一作である。
ゲーム中ではザッピングシステムを採用している。
一定の節ごとにプレイヤーキャラを任意で選択し、複数の登場人物の視点でストーリーを進められる。
選択できるキャラクターは、主人公である神宮寺三郎、助手の御苑洋子、友人であり所轄署の警部でもある熊野参造、事件の依頼人の妹永田美貴の4人。
同システムは、5作目『未完のルポ』でも採用されていたが、ザッピングといってもパラレルワールド的なものであり、整合性の部分に問題があった。
本作では、あるキャラクターのシナリオで起こる出来事は、別のキャラクターのシナリオでも同様に発生する。また、チャートマップが追加されてルートを把握しやすくなった。
本作で追加された各システムは、後のシリーズ作品のベースとなった。
D-MODE(推理モード)
調査の節目を迎えたところで、情報を整理して一つの推理を導き出すモード。神宮寺が順を追って疑問点をピックアップするので、プレイヤーは正しい選択肢を選んでいく。
S-MODE(捜索モード)
家宅捜索などは、前後左右が3DCGで立体的に描かれた室内マップを直接調べていく(ブラウザゲーによくある脱出ゲームのような感じ)。
PASS WORD
ゲーム中に4文字のアルファベットの文字列を発見する事がある。これをパスワード入力画面で入力すると、人物紹介などのおまけ要素が解放される。
パスワードの入手方法は、調査中に事件とは関係のないところを調べる、ミニゲームに勝利する、謎の事件簿を解決するなど様々。
あらすじ
近ごろ神宮寺は、自分が過去にニューヨークにいた頃の悪夢を見る。
それは決して忘れる事のできない、神宮寺と洋子が初めて出会った時の事件の夢だった。
今日もまた朝がやってくる。
その日、助手である洋子の古い友人から神宮寺の所に舞い込んだ依頼は、よくあるストーカー調査。調査は順調に進み、ほどなくして事件は無事に解決したものと思われた。
しかし、それを切っ掛けに、神宮寺と洋子は「終わらない悪夢」を思わせる、新たな事件へと巻き込まれていく。
探偵 神宮寺三郎 灯火が消えぬ間に
概要
『神宮寺三郎』シリーズ7作目。
データイーストから発売された同シリーズ作品としては、最終作に当たる。
発売直後に会社が和議申請によって倒産したため、結果的にこれがデータイースト製の最後のゲームとなった。
前作『夢の終わりに』とシステムの基礎はほぼ同じ。イラストは寺田克也が担当している。
前々作、前作と同じ骨格のコマンド総当たりADVに、日付による時間制限やマルチエンディングなどの要素が追加されている。
シリーズの過去作品同様、敵・味方といった単純な図式ではない複雑な相関関係にある多くの登場人物に対し、それぞれ背景や内面を描きこんで深みを与えていく探偵物語である。今回は聞き込みモードで脇役との会話も作りこまれ、より親しみやすい。
序盤から丁寧に伏線が張られ、連続した複数の事件が絡みあって畳み掛けられるように話が進み、終盤でそれが1つの結末に収束していく。こうした、複雑な構成ながら理解しやすく、プレイヤーの興味関心を安定して保ち続けるシナリオ運びも好評。
それらの良質なシナリオと本作のシステムは上手く噛み合い、全体的に探偵ものADVとして「らしい」仕上がりと言える。
あらすじ
新宿歌舞伎町に構えられた神宮寺の探偵事務所に、ヤクザに追われているという一人の若者が駆け込んできた。
助けを求められた神宮寺は、若者を事務所に匿う事にする。
そんな折、神宮寺の元に、若い女性の失踪事件の調査依頼が舞い込む。また、友人である熊野警部からは、新宿に潜む拳銃密輸ルートの捜査協力を求められた。
いつになく多忙な事務所に居候する件の若者──八木正隆は、世話になるせめてもの恩返しにと、雑用兼助手のような気持ちで自分なりに行動を始める。
神宮寺はそんな素人の奔走に頭を痛めつつも、にわかに活気付いた事務所の空気に顔をほころばせる。
しかしこの時既に、新宿には不穏な影が忍び寄っていたのだった。
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