各国のクリスマスケーキ事情

いろいろなクリスマス菓子

そろそろクリスマスが近づいてまいりました。

皆様のお宅では、どのように過ごされますか。

本日は、各国のクリスマスケーキについて書いてみようと思います。

ちなみに、この季節のクリスマスに食べられる日本の

「イチゴの生クリームショートケーキ」は、

「不二家」様が最初に作られたもので、

その後のプロモーションで日本中に広まったものだそうです。

フランスの「ブッシュ・ド・ノエル」と「ベラベッカ」

「ブッシュ・ド・ノエル」は、フランス各地で、

「ベラベッカ」は、フランスのアルザス地方で食べられているクリスマス菓子です。

「ブッシュ・ド・ノエル」は、「クリスマスの薪」という意味のフランス語です。

ロールケーキを重ねて薪に見えるようにしたデコレーションケーキになります。

日本の古い料理書には、「トロンコ」という名前で紹介してありましたが、

この理由はいまだ筆者には不明で、調査中の事項になります。

クリスマスの前の晩、

一晩中火を絶やさないために特別な固い薪を選び、

木の葉とリボンで飾りつけ、家族の長によって油や蒸留酒、

時には聖水で祝福を与えたあと暖炉にくべました。

そしてその暖炉の灰を大切に保存し、

次の一年間、稲妻や悪魔から家を守るお守りとしたそうです。

フランスのアルザス地方で12世紀頃に始まったこの習慣は、

ヨーロッパ全土に広まりましたが、

19世紀頃には鋳物のストーブの登場と共に姿を消しました。

代わりに、クリスマスのテーブルの中心に飾り付けた薪を飾るようになり、

今ではケーキへと変わったそうです。

「ベラベッカ」について

そして、現在のアルザス地方でクリスマスに食べられている「ベラベッカ」は、

この地域の方言で「洋ナシのパン」という意味で、

ドライフルーツがたっぷり入ったパン菓子になります。

アルザス地方では、かつては「新年のパン」「年賀のパン」として、

新年の挨拶代わりに手土産として持っていく風習もあったそうです。

ベラベッカの発祥の地であるアルザス地方は、

ドイツとフランスに代わる代わる統治されてきた歴史があるため、

両国の食文化が混ざり合っていて、

そのため、同じくクリスマスのお菓子である

ドイツのシュトレンとベラベッカは、どちらもドライフルーツが入っていたりと、

共通点も多いものです。

このケーキは、かつてアルザスに強く根付いていたユダヤ人社会が、

アルザスの方言や文化にその痕跡を残していることに由来しているそうです。

実は、ベラベェッカは洋梨のケーキではなく、

アルザス地方の伝統的な過越祭のドライフルーツケーキで、

それをキリスト教徒がクリスマスのお祝いに引き継いだものなのだそうです。コップとキルシュの瓶と一緒に写った、黄色の縁のさらにのったベラベッカの画像

ベラベッカの画像

お菓子マニアの間では、

「シュトーレンのつぎに流行するクリスマスケーキでは?」

ともささやかれているそうです。

英国の「クリスマスプディング」

英国の伝統的なクリスマスケーキは、

「クリスマス・プディング」と呼ばれる、

ドライフルーツたっぷりの「プディング」になります。

具材にプラムが使われることが多いため、

プラム・プディング (plum pudding) とも呼ばれますが、

古英語では、「干した果物全般」をプラムという時代もあったため、

定かではありません。

味や食感、外見は日本人が想像するケーキや

一般に「プリン」と呼ばれるカスタードプディングとは大きく異なります。

味は濃厚で、その食感は「ドライフルーツが舌に絡む」とも言われます。

筆者も市販品を食した事がありますが、

ドライフルーツのピューレとカルピスを混ぜたような味がしました。

「クリスマス・プディング」の歴史

「クリスマス・プディング」の起源は、

中世のクリスマスに作られた濃厚なスープ、

あるいは肉と果物が入ったポリッジがクリスマスプディングの起源とされていて、

それらの粥はケルト神話の収穫の神ダグダにあやかって

作られたものが起源とする説もあります。

16世紀までにクリスマスのシンボルとしての地位を確立し、

清教徒革命中のクリスマスでは、

クリスマスプディングはミンスパイと共に製作を禁止されました。

不必要なぜいたく品と見られたからだそうです。

チャールズ2世の時代に材料に増粘剤が加えられて現在のような固形の料理になり、

チャールズ・ディケンズが著した『クリスマス・キャロル』にも

固形状のクリスマスプディングが登場します。

そしてヴィクトリア女王がクリスマスプディングを

英国王室のデザートに採用して以降、

イギリス国民のクリスマスに欠かせないデザートとして定着しました。

各家庭ごとに異なる味とレシピがあり、

イギリス人にはこれについて一家言持つ人が多いものです。

(日本のお雑煮の例を想像すると理解しやすいでしょう)。

しかし、今日ではお手製のクリスマスプディングの代わりに

市販のものを購入する家庭が多くなっております。

この理由は、中に入れる「ミンスミート」を作るのに、

とても時間と手間がかかるからと、

年単位で寝かせる必要があるお菓子だからのようです。

筆者も最初から作るのは少し面倒かな、と思い、まだ手作りした事はありません。

クリスマスに洋酒をかけ、火をつけてフランベして供しますが、

青い炎がたって風情はあります。

ヒイラギを飾ったクリスマスプディングの画像

クリスマスプディングの画像

クリスマスのシュトーレンとレープクーヘン

ドイツのクリスマスケーキは、

おくるみに包まれたキリストの形と言い伝えられている

パン菓子の「シュトーレン」と、「レープクーヘン」と呼ばれる、

はちみつとスパイスがたっぷり入って日持ちがする

クッキーのようなケーキが主流になります。

シュトーレンは、薄く切ってクリスマスまでの間

1か月ほどかけて食するのがドイツの慣習だそうです。

日本でも作る洋菓子店様が多くなってまいりました。

リボンのついた「シュトーレン」の画像

シュトーレンの画像

レープクーヘンは、グリム童話に出てくる「魔女のお菓子の家」のモデルにもなった、

ニュルンベルクのクリスマス菓子になります。

「お菓子の家」は子供の憧れですね。

最初のレープクーヘンが製作されたのは、

ベルギーにある町・ディナンと言われています。

そこからベルギーとドイツの国境の町・アーヘンの人たちによって継承・変化。

さらに、フランク地方にある修道院に引き継がれていきました。

修道士たちはそれをデザートとして食べていたそうです。

名前の由来ですが、正確な語源が見つかっていないそうです。

語源の一種として、「レーベンクーヘン(Leben Kuchen)」=生命のケーキ」

と解釈する説や、

「リーブム(libum)=ラテン語でパンケーキ、捧げもののケーキ」が

起源とされる説もあるようです。

レープクーヘンでできたお菓子の家

レープクーヘンで出来た「お菓子の家」

オーストリアの「クグロフ」

クグロフはパンのような発酵生地で作られるのが一般的です。

洋酒などで漬け込んだドライフルーツがたくさん入っています。

ドライフルーツとの相性を考えて、

卵は多くバターは少なめのリッチな生地が特徴です。

特徴的な「クグロフ型」に入れて焼きます。

日本では金属型がたくさん流通しておりますが、

陶器製の型で焼いた方が、しっとりして美味しい、と

オーストリアのお方はおっしゃっておられます。

甘さが控えめで素朴な味わいのため、

ハムやチーズを挟んだり

生クリームやジャムを添えたりして楽しむ人も多いお菓子です。

「クグロフ」の名前の由来

名前の由来は数多くあります。

1つ目はアルザス語に由来しているという説です。

フランスのアルザス地方では、

クグロフを「クーグルポブフ(Kugelhopf)」といいます。

ドイツ語で「球」を意味する「kugel」と「ホップ」を意味する「hopfen」を合わせ、

クグロフという言葉が生まれたという説が有名です。

昔は、ホップという植物で発酵させて膨らませていたようで、

この説が出てきております。

帽子に由来しているという説もあります。

14世紀にフランスのアルザス地方で流行した

「グーゲルフエッテ(Gugelhuete)」という帽子にクグロフの形が似ているとか。

ちなみにその帽子についても、

“フランスのストラスブール地方の議員がかぶっていた”とか

“僧侶の頭巾だった”とか、さまざまな説があります。

クグロフは世界で有名なお菓子のため、

昔の出来事を語源に結びつけているケースもあります。

そのなかでも有名なのは、東方の三博士が泊めさせてもらった

家の家主である陶器職人の名前が「クーゲルさん」だったという話です。

そのクーゲルさんの名前をとってお菓子の名前にしたという説があります。

アイシングが上にかかったクグロフの画像

クグロフの画像

スペインの「ロスコン・デ・レジェス」と「ポルボロン」

スペインではクリスマスが2回あり、

12月25日のクリスマスと翌年の1月6日の

「レジェス・マゴス(三賢者の日)」があります。

(キリストの誕生祝い三賢者が贈り物を届けに来たとされる日)

子供たちがプレゼントをもらえるのは、1月6日の三賢者の日です。

この日に食べられるのが、「ロスコン・デ・レジェス」になります。

円形で、ドライフルーツで飾り付けられた、クリームの挟まれているパン菓子です。

スペインでは、家庭で手作りするよりも、

近所のパン屋さんで買ってくることが多いそうです。

レシピはお店によって少しずつ違い、

必ずしもクリームが入っているわけではありません。

(かつては入っていなかったそうです。)

クリームも生クリーム、アーモンドクリーム、カスタードなど色々です。

「ロスコン・デ・レジェス」の特徴

パンの中に陶器の人形が入っているのも特徴で、

これはフランスの「ガレット・デ・ロワ」にも通じる慣習なのでしょう。

当たった人には幸運があると言われているようです。

アメリカでも、こういう人形の入ったケーキをホームパーティーで供して、

人形が当たった人が次のホームパーティーのホストになる、

などという遊びも流行っていたそうです。

ロスコン・デ・レジェス2つの画像

ロスコン・デ・レジェスの画像

「ポルボロン」は、スペイン・アンダルシア地方発祥の

伝統的な焼き菓子のことです。

スペインでは、記念日やクリスマスなど、

お祝いの日によく食べられるお菓子です。

複数形はポルボロネス。市販のものは箱詰めで複数個が入っているため、

複数形の名称で販売されております。

「ポルボロン」の名前の由来

「ポルボ」は「粉」の意味で、「ロン」は崩れるの意味です。

小麦粉をオーブンで焼いて他の材料と混ぜ、

球形に丸めて焼いて作る特徴があります。

ポルボロンの画像

イタリアの「パネトーネ」「パンドーロ」

イタリアのクリスマス菓子の代表とされるのは、

「パネトーネ」と、「パンドーロ」というパン菓子になります。

「パネトーネ」は、卵や砂糖、バターをたっぷりと使ったリッチな配合の生地に、

ドライフルーツが入った菓子パン。ふわふわとした軽い食感と、

ドライフルーツの甘酸っぱい香りが魅力です。

イタリアのミラノで発祥したもので、

イタリア語で「大きなパン」という意味があります。

パネトーネの作り方

一般的にパン作りにはイーストを使うことが多いのですが、

パネトーネでは自然酵母であるパネトーネ種を使っているのも特徴です。

パネトーネ種とは、生まれたての仔牛が初乳を飲んだ後の腸から取り出した菌を

小麦粉と混ぜて培養したものです。

ほとんどの家庭がパネトーネを手作りするのではなく

お店で購入するのだそうです。

パネトーネ種で作ったパンは、イーストで作った一般的なパンに比べて

日持ちするといわれております。

これは、パネトーネ種を使うとできあがりの水分含有量が低くなり、

水分活性も低くなることによって、カビなどの微生物が発生しにくくなるためです。

また、パネトーネ種特有の風味ややわらかな口当たりを出すこともできます。

とはいえ、少しぱさついた感じになるのは否めないので、

今のイタリアでは、もっと口当たりの良い

「パンドーロ」(黄金のパン)が人気の模様です。

パネトーネに関するちょっとした事件

パネトーネは大きなパンであるうえ日持ちするので、

クリスマス前からクリスマスが終わるまで、

毎日少しずつカットしながら食べます。

その間にドライフルーツが熟成して生地になじんできたりして、

少しずつ味が変化していくのも楽しみの一つです。

パネトーネはクリスマスプレゼントとして手土産になる事も多く、

イタリア在住の或る日本のお方の家に一度に7つ集まった事があり、

それをいろいろと工夫してクリスマスシーズンに完食したら、

ご近所で「パネトーネを7つ食べた日本人」と有名になった、

という笑っていいのかわからない話も聞いた事があります。

パンドーロについて

パンドーロ は、

イタリアのヴェローナの銘菓です。

パネトーネと共にクリスマス特有の菓子の一つで、

バニラの香りがついた粉砂糖をまぶして食べられます。

生地は軟らかく、玉子由来の黄金色で、バニラの香りです。

形状は先端のない円錐形で星型にえぐれていて、通常は8つの頂点があります。

材料は、小麦粉、砂糖、卵、バター、カカオバター、酵母です。

単純なのですが、作るのが非常に難しい為、

日本のクリスマス菓子としては普及していないのですが、

おいしそうなので、ぜひ普及してほしいと筆者はひそかに願っております。

パンドーロの歴史は古代ローマに起源があると言われております。

当時は卵、バター、オリーブオイルと、

様々な小麦を混ぜ合わせた最高級の小麦粉が材料として用いられていました。

現代に繋がるパンドーロのレシピは、

13世紀にヴェネツィア貴族の宮廷で出されていた

”pane de oro”(黄金のパンの意)に由来しているそうです。

中世の時代、甘いパンというのは特別に貴族達へと納められるものでした。

卵、バター、砂糖にハチミツがたっぷり使われたこのパンは王宮で重宝され、

王のパン、または黄金のパンとして認知されていたようです。

割ったパネトーネの画像

パネトーネの画像

ギリシャの「メロマカロナ」

メロマカロナ は、

ギリシャの粉とオリーブ・オイル、蜂蜜を原材料とした卵形のお菓子です。

シロップをかけたクッキーのようなお菓子になります。

クラビエデスというアーモンドクッキーと共に、

クリスマスの際に用意される伝統的なデザートになります。

メロマカロナの画像

アイスランドの「ヴィーナルテルタ」

アイスランドのクリスマスケーキは、

「ヴィーナルテルタ」(ワインのケーキ)と呼ばれるアーモンド生地の

薄いケーキとスパイスの効いたプルーンジャムを重ねて層にし、

上からワインをかけたケーキが各家庭で作られます。

クリスマスの大事な家族行事の一つだそうです。

アイスランドのクリスマスケーキ「ヴィーナルテルタ」の画像

「ヴィーナルテルタ」の画像

スウェーデンの「ルッセカット」

スウェーデンではクリスマスシーズンにLussekatt(ルッセカット)

「ルシアの猫」という名のサフランパンを食べます。

1年で一番暗い時期にあたる12月13日に、

光の聖人「ルシア」を祝う祭があり、聖ルシアがこのパンを配ります。

スパイスに使うサフランは、

アラビア語の「黄金にする」という言葉が変化したもので、

スウェーデンでは1800年代からクリスマスのスパイスとして使われてきました。

そして、このサフランを使ったルッセカットは、

ルシア祭とクリスマスのための特別なパンになりました。

千年以上も前から、黄金色のサフランパンは不思議な力を持つと信じられ、

願いを込めて様々な形に作られてきました。地方によって形が異なり、

車輪や人や動物の形など、その種類は20以上もあるようです。

焼いたサフランパンのいくつかは、来年の豊作を願い、

種を蒔く春までとっておくことから「種蒔きのクッキー」とも呼ばれていたそうです。

また、スウェーデンのお方は、

冬になるとそのほかにもサフランをいれたお菓子をよく作る習慣があります。

ニュージーランドの「パブロヴァ」

南半球に位置し、クリスマスの時期は夏にあたる

ニュージーランドのクリスマスケーキは、「パブロヴァ」になります。

パブロヴァという名前は、1920年代のバレリーナ、アンナ・パブロヴァに由来します。

一般的な製法は、焼いたメレンゲをベースにしてホイップした生クリームを詰め、

さまざまなフルーツなどを飾り付けたものです。

製菓業の世界では、余った卵白の使い道が問題になっておりますし、

プロなら結構簡単に作れるレシピと思います。

日本人の味覚にも合いそうなので、

もしかすると、少し未来の日本のケーキのトレンドになるかもしれない、

と筆者は考えております。

それぞれのクリスマス菓子の画像を見てみますと、

日本人からすると「意外に地味」に見えます。

欧州のキリスト教徒にとってクリスマスは厳粛な宗教行事なので、

日本のお正月のような感じで、

大事な食べ物であるパン菓子や特別なケーキで迎える日になります。

その代わり、1年の始まりはイベント感覚で身内や友達と集まって

パーティをする事が多いようです。

各国のクリスマス菓子について

https://www.sunwood.co.jp/sunwoodclub/webmagazine/magazine_201411.html

https://shop.sweetsvillage.com/blogs/knowledge/world-christmas-cake

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モーニング

朝が弱く、空気が読めないキャラクターです。食べ物についてのコラムを中心に書かせて頂きたいと思います。 好きな事は、読書と料理、菓子作りです。

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