マキャベリスト様は存外家庭的がお好き

神経が細かいマキャベリスト

皆様は、「リシュリュー枢機卿」というお方をご存じでしょうか。

ニッコロ・マキャベリの著書「君主論」に出てくる政治家のお手本のようなお方で、ヨーロッパを代表するマキャベリストと言ってもよろしいでしょう。

冷徹な政治家だったのですが、存外「食」という観点から見てみると、家庭的なあたたかいお菓子が好きだったり、繊細で技術的に難しい料理が好きだったり、神経が細かい所があったりする人とも言えます。

人には多面性があるもの、ということを教えてくれる人物でもあります。

「三銃士」その他の本で悪役として書いてあるので、そういうイメージが定着している人でもありますが。

テーブルナイフの先が丸い理由

今、フランス料理店で出てくるナイフの先が丸いのは、この人物の影響になります。

このお方は、作法が厳しい家で育ったので、当時の他のフランス貴族の方々が、全員で使いまわすナイフの尖った先の方で歯の掃除をするのが我慢ならず、「すべてのナイフの先を丸くするように」と、カトラリーを作る金物職人様方におふれを出したそうです。

今の基準ではかなりの無礼無作法な上、不衛生ですが、リシュリュー枢機卿が生きていた当時は、貴族が自宅では食べ物を手で食するのも割と普通、カトラリーというものは宴席に参加したみんなで使いまわすもの、衛生学の概念などかけらもない、という状況で、このお方がお亡くなりになられてしばらく経ってから、「貴族は全員各人のカトラリーで食事をするように」と王様からの命令が出たという事です。

というわけで、この時代のマジョリティーをこの点でも敵に回していた事は間違いありません。ちょっと気の毒なようにも思えます。しかし、感性的に我慢できない、というのはとても個人にとって大きな事なので、本人は敵を作ってもまあ仕方ない、と思っていたのではないかと思います。

現在の料理に残る痕跡

また、現在に残っている「リシュリュー」と名前のつくお菓子が一つ、料理が一つ確認出来ましたが、どちらもある程度作るのに技術が要り、また、当時としては値段の高い材料を使っておりましたが、どちらも家庭的といえるようなお菓子と料理になります。

「リシュリュー・クルート」と、

「パテ・アン・クルート・リシュリュー」という

ものなので、お暇な方は検索してみられてください。

パテの画像

シビアすぎる政治と外交の世界に生きていた人なので、自宅に帰ると、家庭的で優しいお味を求められたのかもしれません。

なんとなく、ちょっと昔のミッテラン大統領が一流のシェフではなくて、ブルジョア階級のおばさまの料理人を雇った話を思い出します。

もっとも、神経質そうなので、使用人の方々は結構大変だっただろうな、とも思います。

何にせよ、この方のおかげでフランスは大いに繁栄し、外交の宴席や正式な席での料理は、すべてフランス料理になったのはある意味この方のおかげと言えるかと思います。

リシュリュー枢機卿について

https://www.y-history.net/appendix/wh0904-084.html

ナイフの先が丸くなった理由

パテ・アン・クルート・リシュリュー」

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モーニング

朝が弱く、空気が読めないキャラクターです。食べ物についてのコラムを中心に書かせて頂きたいと思います。 好きな事は、読書と料理、菓子作りです。

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