イースト発酵食品が根付いていない食文化圏
色々な国の料理を作っていると、地域と国によってくっきりと違う部分があったり、国境あたりで食文化の境界がぼやけていたりする地域が見えて、面白いものです。
筆者が特に面白いと思うのは、ケルト文化圏の昔からの調理法では、ほとんどイーストを使った菓子や食品が無い、という事です。
ソーダブレッドの画像
普段のパンはソーダブレッドと言って、ベーキングパウダーで膨らませるものが主流で、イーストを使う伝統菓子といえば、クリスマスに食べるバーンブラックという干しブドウとその他のドライフルーツが入ったものなのですが、あまり普及していないようで、今はティーブラックというお菓子が主流のようです。
文献を調べてみると、「アイルランドは気温が低く、イーストの発酵が難しかったため」と書いてあるものもありますが、もっと北の北欧やロシアでもイーストのパンの文化があるので、これは違うような気が致します。
どうも、ケルト文化に所属する食文化自体が、イーストに馴染みがない、というのが正解のようです。
そば粉のケルト文化圏の食文化「ガレット」
同じケルト系の人が在住しているフランスのブルターニュ地方でも、主食はパンではなくてガレットになっております。
ロシアでそば粉を入れて作るパンもあったりするようなので、パンにして食べる方法が無い訳ではないと思います。
アイルランドやブルターニュ地方の人も、今からでもイースト発酵で作るお菓子やパンを取り入れたら面白いのに、と思うのは筆者がこの方々から見ると外国人だからで、欧州の方々の食文化に関する愛着というものは、日本人が想像を絶するような側面があるようで、なかなか先祖が食べた以外のものを食べない、というような頑固さがあるように見える時がございます。
今でも、ロンドンに行くと200年前の料理書「ビートン夫人」の本が販売されていて、重宝されているのには驚くばかりです。
アイリッシュのパン文化への期待
アイルランドには舌の肥えた人も多いし、ユニークな発想を尊ぶ傾向もあるので、アイルランドの調理関係者様の方々がパンの世界に進出したら今までにない面白いお品を作ってくれそうな気が致します。
そういうものを見られる日が来るといいと思います。
ティーブラックについて