欧州の国の宮廷菓子の違い
昨今、筆者が欧州菓子の本を読んでおりましたところ、
フランスの宮廷に出入りしていた貴婦人のサロンで出されていたお菓子や、宴会の際に出されていたお菓子には、お米を使ったものがいくつかありました。
イングランド貴族の食卓にも、デザートにライスプディングが出されていたという記述がありました。
ライスプディングの画像
しかし、お米が実際に作れる気候であるスペインやポルトガルの宮廷菓子には、お米が使われている物が見受けられないのです。
ネットで検索しても、出てきませんでした。スペイン、バスク地方の庶民の食卓のデザートには、お米を使ったものがありますが、宮廷料理ではお米のデザートが見つからないのです。
「お米」が宮廷菓子に供されない歴史的背景
これはどうした事なのか、と筆者なりに考えてみました。
ローマ時代頃からスペインやポルトガルに在住していたコーカソイド系の方々は、小麦を作ってそれをパンやお粥に加工して主食として食する文化を持っていた人々だったようです。
稲作をこの地域にもたらしたのは、この地を後に征服したイスラム教徒の方々で、気候が温暖で稲に合っていた事と、ローマ時代からの水道があり、水に困らなかった事があったようです。
基本的に稲が育つのは湿地で、小麦が育つのはわりに乾燥している土地、という事になっております。
どうも小麦が育たないような湿地を持っている人たちが主に稲作に従事し、パエリアやアロス・コン・レチェ(お米のデザート)等の食文化を形作っていったようです。
また、なぜ今スペインやポルトガルが存在しているイベリア半島にムスリムの国がないかというと、コーカソイド系の貴族が率いる軍団が戦争をしてイスラム王国の領主たちを追い出したからなので、コメは敵国の食べ物、という概念があって、いまだに食後の菓子や普段の料理に取り入れたくない、という心情的なものもあったのかもしれず、それが今の食文化にも影響しているのかもしれません。日本人には考えられないほど、「根に持つ人」が多いのが海外の国家や民族というもののようです。
「コメ」になじみのない人々
また、スペインの一番えらい人であった国王陛下の家系の人は、コメに馴染みのないヨーロッパの北国からきた家系、ハプスブルグ家の人たちだった、というのもあるのかもしれません。
このような事情が複雑に絡み合って、今のスペインやポルトガルの宮廷料理と呼ばれるものにはお米の要素がない模様です。
フランスや英国では、「舶来のスパイス」としての地位をお米は獲得しているようだったので、宮廷の食卓にも上っている、という事情があるのでしょう。
機会があったら、このあたりを詳しく、欧州ネイティブの食文化関係者に聞いてみたいものです。
欧州の稲作事情
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/050325_pr15_06.pdf