「甘酒」は夏の季語
皆様は、「甘酒」はお好みでしょうか。
冬のお祭りやお年始参りの時、神社仏閣にて頂く飲み物、というイメージが強いのではないかと思います。
筆者も、小さいころからそうだったので、甘酒は冬に身体を温める為に飲むもの、もしくは、山の上の茶屋で飲むもの、というイメージでした。
しかし、大きくなって歴史の本を読むようになってみると、江戸時代末期から明治初期にかけては、暑気払いに熱い甘酒を飲んでいた、という文献を見かけるようになりました。
江戸時代は今より気温が低かったとはいえ、熱い甘酒というのはどういう事か、と不思議に思っておりました。
器に入った甘酒の画像
江戸時代に甘酒が飲まれていた事情
そこで、もっと詳しく調べてみると、江戸時代は食料事情が今よりよろしくなかったようで、栄養状態が悪く、平均寿命も短かったようで、夏に衰弱して亡くなる人も多かった、という事が分かってまいりました。
今でも「飲む点滴」と呼ばれている栄養豊富な甘酒を飲んで、栄養補給をしていたようなのです。
当時は砂糖が貴重品だった事もあり、数少ない庶民にとっての甘い飲食物の一つだったのでしょう。(黒糖は薩摩藩の専売品、和三盆糖は上流階級だけが食していたようです。)
そこで、甘酒が日本各地で好まれて売り歩かれていた、という事が分かりました。
なぜ熱くして販売していたかというと、「栄養豊富」ゆえに、生ぬるい状態にしておくと腐ったり他の細菌が繁殖して、栄養食品のはずが逆に害になりかねず、品質保存の為に熱くして保管し、販売していたようなのです。
甘酒受難の時期
明治から大正時代にかけて、甘酒売りのお店の数も増えたようなのですが、にわか仕込みで販売を始めたお店で中毒が出たり、このころに起こった関東大震災で甘酒店が被災したり、店主が亡くなったりして甘酒店が少なくなり、さらに、砂糖が量産され、他のお菓子も出回るようになった為、「夏の甘酒」という習慣はすたれていき、安全に飲める冬場や管理がしっかりできる昔からの山の茶屋などで飲めるもの、という事になっていったようです。
現在の甘酒事情
今は、発酵食品がブームになって久しい事もあり、だんだんと甘酒の良さが見直されてきているようです。
昨今見た本にも、甘酒を使ったパウンドケーキのレシピが書いてありました。
今度、機会が有ったら作ってみたいものです。
甘酒の歴史