普段食べているのはジャガイモの「地下茎」
皆様は、「ジャガイモ」のお料理はお好みでしょうか。
ポテトサラダやポテトチップスなどが好物のお方も多いでしょう。
実は、ジャガイモの「芋」といって食している部分は、サツマイモやサトイモのように「根」の部分ではなく、「地下茎」という部分になります。
ジャガイモの画像
ジャガイモの「イモ」部分の役割
このジャガイモの「地下茎」には、いろいろな役割があります。
まず、食害する動物や昆虫を果実や種子に近づけない役割が大きいでしょう。
野生種のジャガイモの地下茎には強い毒があります。
ジャガイモに近づいた動物や昆虫等は、まず、この太った地下茎が食用にできそう、と判断して一口食べてみるケースが多いのですが、毒にあたってひどい目に遭い、もう2度とこの植物には近づくものか、と学習します。
そして、生殖器官であり、めったに咲かないジャガイモの花と果実と種子には近づくものが少なくなり、無事にジャガイモの種子は発芽して繁殖できるということになります。
もう一つの役割が、「栄養の貯蓄所」です。
ジャガイモの地下茎には葉の光合成で出来たでんぷん質が蓄えられており、原産地のアンデスでは頻発していた気候不順の折に、植物体を支える栄養源としても働きます。
そして、3つ目の役割が、「栄養生殖源」です。
何かの間違いやトラブルで花が咲かなかったり、種子がつかなかったりした場合に、地下茎そのものが成長して芽を出し、個体数を維持する役割を果たすのです。
荒れ狂うアンデス山脈高地の気候に巧みに適応した、実に見事な生存戦略を持った生物と言えるでしょう。
ジャガイモの生存戦略を「悪用」?した生物
ところが、ジャガイモの原種植物がアンデスに適応して暮らすようになったかなり後に、この生存戦略を悪用して栄養源にする生物が後から入植してきました。
ホモ・サピエンス、人間です。
多くの中毒患者を出しつつも試行錯誤を繰り返し、「チューニョ」というフリーズドライ加工食品にすれば、中毒せずにでんぷん源として食物利用できるという事を発見したのです。
中でも「ケチュア族」と呼ばれる民族は、ジャガイモを栽培植物化するために多大な努力をし、無毒で地下茎の収穫量が多いジャガイモの品種を多数作り出すことに成功しました。
そして、ジャガイモを政治の道具につかったという場合もあったのです。
南アメリカは気候が安定せず、農作物の収穫量が安定せず、人々は苦労してくらしておりました。
そこに、収穫量が多い作物を提供してケチュア族傘下に加わるように勧誘していき、勢力を伸ばしていったのです。
その後、スペイン人に滅ぼされるまで、このケチュア族が支配階級として統治する国、タワンティン・スーヨ、通称インカ帝国は繁栄しました。
そして、この帝国が滅びた後、欧米社会にジャガイモは持ち出されることになり、最初は胡散臭い植物とみられていましたが、結果的には全世界に栽培地域が広がって現在に至ります。
この状況では、人間がジャガイモを利用しているのか、ジャガイモが人間の力を借りて全世界で繁栄しているのか、微妙なところです。
以上、ジャガイモの立場に立って、人と食物の関係を今回のブログでは書いてみました。
これから先、人間とジャガイモの関係はどうなるのでしょうか。