不思議な存在や事象に憧れる。
でも、私自身は不思議な体験をしたことがほとんどない。幽霊も、UFO・UMAも見たことがない。
だから、テレビ番組などでUFOを見たり、不思議な体験をしたりした人の話を聞くと「いいなあ!羨ましいな~」と思う。
もしも私が不思議な現象に出くわしたら、まずは親類縁者に話してまわる。そして「テオさんは運がいい。そうしたことには滅多に遭遇できないよ」と言われ、得意になるのだ。「テオさんは選ばれた人だ!万歳!!」
そうこうしているうちにテレビクルーがインタヴューに町にやって来る。そうなりゃ私は一躍時の人だ。ミステリー番組で特集を組まれて、皆から羨ましがられ、憧れられる…。「テオさん、サインしてください!」「テオさん、本の出版に興味はありませんか?」神社からは神輿が出され、私は担がれて町内を練り歩くことに…。
そういう展開まで妄想してニヤニヤするまでがセットである。
都合の良い妄想が出来上がれば、急にいい気持ちになってくる。
そして「スポットライトを浴びる準備はできています!さあ、UFOさん、UMAさん。私の目の前にドンと現れてください!!宇宙人さん、交流しましょう!」と鼻息荒く不思議な現象を待ち構える。
友好的な宇宙人にアブダクションされて、宇宙旅行をする。それか、夕暮れ時に散歩をしている最中に、藪の中からツチノコが現れる…。私の夢や希望は広がる一方だ。
しかし、いくら夢が広がれども、一向に不思議な体験をする気配がない。みじんもない。今日も朝起きて、朝食をもらい、身支度をして…といったようにいつも通りの一日が巡っていく。
そうすると、次に私は「どうして宇宙人は私の前にやってこないのだろう」と疑問に思い始める。そんなこと宇宙人に聞かなきゃわからない。
そしてもっと考えてみると、2つのことが思い浮かぶ。
それは「影響力のある人じゃなければUFOまたは宇宙人はコンタクトしてこないんじゃないか」ということと、「もしも本当に不思議な存在が現れたり、不思議な現象が起こっても困る」ということだ。
1つ目に関して掘り下げてみよう。
私が仮に宇宙人だとすれば、コンタクトする人を選ぶと思う。
そこで、私とコンタクトをしたら彼らにどんなメリットが得られるのか考えてみた。…ない。何もない。存在を広めてほしいのだとしても、私のような交友関係が狭い人間には頼んでも効果があまりないだろう。
次は2つ目に関して掘り下げる。
私自身に問いかけたいことだが、本当にスポットライトを浴びる準備ができているのだろうか?口下手なくせに、周りを感心させるほど上手に、不思議な出来事について語ることができるのか。
よしんば、周囲の数少ない人間を感心させることができたとしても、テレビクルーの前で同じように話せるのか。信じてもらえないかもしれないし、嘘つきのレッテルを貼られ、大バッシングを浴び…私だけでなく家族までにも迷惑をかけかねない。
それほどまでの危険性を孕んでいるのだ、不思議な現象との遭遇は。
それらのことを考えると、不思議な存在や現象が私の周りで起きないのは当然だし、それで良いのだという結論に達する。
ああ、平凡で良かった!
でも、やっぱり超常現象やオカルト番組を熱心に見て、家族と語り合うと「不思議な現象が起きないかなあ」などと考えてしまう自分はいる。
何の不安や危険もなく、楽しく不思議な体験ができたらいいのにな。
そんな風に都合のいい願望を抱く瞬間は、まだまだ繰り返し私の中で起こりそうである。
終わり
