友達が少ない。知り合いも少ない。だから、結婚式には縁がない人生を送ってきた。もちろん、私自身も結婚どころか恋人にも縁がない。だから、結婚式に出席するなんて夢のまた夢だと思っていた。
しかし、少し前、そんな私にも結婚式へ出席する機会が巡ってきた。兄の結婚式である。
今回は、結婚式に関することの大まかな感想や思い出を簡単に書こうと思う。
結婚式が行われた日は、朝からとても忙しかった。
特に母は黒留袖の着付けやメイク、私は訪問着の着付けやメイクを式場があるホテルの美容室でしてもらわければならなかった。だから、どことなく、みんなピリピリしていたように思う。
私は、太っているため大きめの訪問着を着用した。ちなみにこれは自前ではなく、レンタルしたものである。事前に選択したものを着付けてもらった。
私は、本当に結婚式に関しては無知であった。結婚式なんて、お嫁さんがメイン。みんなの前でキスをしてケーキを切り、花束を投げる…。そういうイメージしかない。
だから、新郎の妹がどんな格好をしていても別に何の問題もないと思い込んでいた。そりゃ、ジーンズとかそういうのはダメだと思う。でもリクルートスーツでいいじゃないか。そんな風に思い込んで、気楽な気持ちでいた。
見た目じゃなくて、大事なのは祝う気持ち。ハートだよ、ハート。あんた。
それを聞いて血相を変えたのは兄である。
「親族はゲストをおもてなしする側なのだから、ちゃんとした格好をしてくれなくては困る。失礼だし、恥をかくからちゃんとした装いをしてくれ」
彼はそう訴えたらしい。…らしい、というのは母から伝言で聞いたに過ぎないからだ。とにかく、リクルートスーツなんかはもってのほかだとのことだ。
私は普段から大して愛想も良くない兄上に対して「ここまでこの人に義理立てる必要もないだろ」と半ばいらだっていた。正直、反発心もあった。
それでも、優しくて綺麗な兄嫁さんの顔に泥を塗ることは避けたかったし、変な恰好をして兄嫁さんが恥をかくようなことになったら可哀想だな…とも思った。
「こんな非常識な妹がいる男」として、もしも夫婦の仲に暗雲が立ち込めることになっても、私は責任が取れない。
そういった理由で、訪問着やらメイクやらを私も頼んだのである。
結果として、訪問着を着せてもらい、メイクをしてもらえて良かったと思う。こうした機会はほとんどないからだ。
鏡を見た私は、自分のことを「おてもやんみたい」と思ったが、周囲の評判は上々だった。
兄も親指を立てて、「Good job」とでも言いたげだった。あんなに愛想の良い兄を見ることなど滅多にない。だから嬉しかったし、着せてもらえてラッキーとすら思った。
とにかく、ドタバタな朝の支度の後、別室で親族紹介を父が行った。スムーズにことが運んでいく。
気がついたら、チャペルで賛美歌を歌い、外国人の牧師さんの説教を聞いていた。この牧師さんのキャラクターは以前の朝ドラ「ばけばけ」のヘブン先生によく似ていた。
チャペルでの結婚式では、親族以外の兄夫婦の友人たちがたくさんいてざわめいている。兄夫婦が入場し、誓いの言葉を述べるシーンや軽いキスシーンが目の前で行われた。
私は中身が小学生男子のようなものなので「人前でキスするなんて、ひゃ~」などと冷やかしの気持ちで見つめていたものだが、割とあっさりと式は終わったので拍子抜けした。
その後、写真撮影をするために親族たちは写真室に移動して、新郎新婦を待った。しかし、なかなか兄夫婦はやって来ない。花びらのシャワーをかけてもらっているらしい。兄嫁のお母さまが「花びらのシャワーを見たかった」とぼやいた。私も同意見だった。
待っている間、新郎新婦の様子を生中継してくれたら退屈しないのにな…。そんなことを思いながら、私はぼんやりと立ち尽くしていた。
写真室には、カメラマンらしき人以外にも着付けをしてくれた女性がいた。気まずい待ち時間を誤魔化すかのように、時折着付けをしてくれた女性が私の訪問着を直した。
長々と待った後に、兄夫婦は写真室へとやってきた。あんなに待たされたのに写真撮影は一瞬で終わった。
その後の披露宴は、非常に楽しかった。兄夫婦のお色直しは素敵だったし、出された料理はどれも美味しい。エビがぷりぷりしていた記憶がある。お酒もぐびぐび飲んだ。
クイズ大会をしたり、ムービーを見たり…お客さんたちはみんな幸せそうだったと思う。
ただ、兄の友人は非常に多く、誰が誰だか私にはまったくわからなかった。だから、披露宴後に私と弟の写真撮影をしに来てくれた兄の友人が一体誰であるのかもよくわからないまま、ヘラヘラと座っていたのが申し訳ない。
結婚式に参加したのは、これがほぼ初めてだった。小さなころに親戚の結婚式に出席したことをおぼろげに覚えているくらいで、他は全くない。
だから、結婚式がどんなものかよくわからなかった。
でも、今回出席してみて、大変だったが幸せで楽しいものなのだということがよくわかった。
出席の経験ができて本当に良かったと思う。
でも、また出席したいかといえば…手間やお金や時間もかかるし、気疲れもするからできればしたくない。
私が開催する側にまわることも、残念ながら今世ではなさそうである。
終わり
