また人に迷惑をかけてしまった。原因は定期的にやってくる自律神経の乱れだと認識している。
我に返って「情けないなぁ」「男らしくないなぁ」と反省をしながら帰宅している最中に知り合いのおじさんと出会って話をさせてもらった。
仙台藩士の家系で大工を引退し、今は自宅近くの畑で毎日農作業に精を出している「男の中の男」だ。
「お帰り!頑張ってるか?」
「ただいまです。おじさん、上手く言えないけど俺弱いんですよ。情けなくて…」
「そうだっちゃな!温室育ちだからな!」
「俺もおじさんみたいに男らしくなりたい。どうすれば良いんですかね?」
「あのな、暇があると人間というのはろくでもない余計な事ばかり考えちまうのや!外で現場で働くことだな!」
「外で体を動かして働くと飯は上手いし良く眠れるし良いことづくめだどー!」
「俺は大工一筋で専務にさせられたが肌に合わなくてな。現場で一人で打ち込むのが性に合ってるのや。集団生活も一人もそれぞれ良し悪しだな。」
「まぁ無理せず頑張れや!」
「ありがとうございました。」
確かに自分は温室というぬるま湯の環境に公的な資金で社会サービスを受けながらどっぷり浸かってしまっている。
言葉では言い表せない、とてつもないもどかしさと後ろめたさがある。これが一番の原因なのは痛いほど分かっている。
「何とかしなければならない。」
そんな思いで自宅の燕の巣を見つめた。
自分で成長し、巣作りをして子供を産んで育てて、立派に巣立っていった。
「何で自分はこんな動物でもできる当たり前のことができないんだろう。」
とても悔しくなった。
これまで自分は人の意見を聞きすぎたり、自分勝手に行動を起こしたりして極端だったのでさんざん痛い目に会ってきた。
厄介な病気としっかり向き合わないといけないし、人の意見も聞かないといけない。
でも最終的には自分で決断しなければいけない。
それで頭がこんがらがってしまって月日だけが流れていってどうしたら良いか訳が分からなくなって自分を見失っていただけだった。
今はっきりと理屈ではなく本能で求めていること。
それは体を動かして働くこと。後ろめたい環境から抜け出して事業所から巣立つこと。
燕のように立派に巣立って自立して自分に自信を持って堂々と生きること。
優柔不断な自分にはもうこりごりだ。
そんな思いで畑仕事と草刈りを汗をかきながら一生懸命やった。
「これだ!」という直感が働いて自信が湧いた。
単に運動不足なだけだったのかもしれない。
やっぱり人間は動く動物なんだとつくづく思った。