おいっ子のチャーハン

暑い暑い夏休み。
子供たちにとっては天国のような季節がやってきた。
私のおいっ子は宿題を済ませてから思う存分楽しむ戦法を取っている。
とても堅実でびっくりさせられる。
お金をかけずに楽しむ方法を忘れた大人の私はただエアコンを頼りに暑さをしのいでいるだけだというのに。
今年の夏は特に暑く感じる。時折命がけで過ごしているような気さえする。
学校の行事で倒れる熱中症の子供たちのニュースを見ると子どもたちも命がけなのかもしれない。
地球温暖化やヒートアイランド現象など、私たちを取り巻く自然環境は年を追うごとに厳しさを増しているようだが、夏は楽しいことがたくさんある良い季節であることに間違いはない。

個人的な話になるが、こんな楽しい季節なのに身の回りの変化に心身が対応し損ねてひどい情緒不安定になっていた。
抑うつで虚ろで体中がダルくてこの世の終わりのような気がしていた。
完全に自分を見失っていて生きる気力が危険な状態にまで低下していた。
厄介なのは自分の感覚や感情や考え方や捉え方を錯覚して間違ってしまうことだ。
自分ではそれが本当のことだと思い込んでいるのだから人間というのは自然や動物と違って困った生き物だなぁとつくづく感じた。

そんな私をコロっと救ってくれたのがおいっ子が私のために作ってくれたチャーハンだった。
それはとても不思議でどんな薬よりも絶大な効果があったのである。
その先日には全く食事が取れずにチューブで栄養補給をしている曾祖父のために雑炊を作って上げたらおいしそうに全部残さず食べたという話を後から聞いた。
それを見た周りの家族は感動して涙を流したらしい。
改めて血のつながり、気持ちの大切さと力を思い知らされた気がした。

ちなみにおいっ子にお礼とお返しをしようと思ったら「おいしかったら良いよ！」と一言だけだった。
その後思いついたように「でも、やっぱり回転寿司が良い！」と無邪気に笑って答えてくれた。

子どもの純真、純粋さより偉大な力を秘めたものは他にあるだろうかとしみじみ考えながら感じた幸せな暑い夏の休日だった。