THRILL SHOCK SUSPENSE #05
2023年1月 変わらない評価を受ける名作推理ADVを紹介 愛及屋烏
一柳和の受難シリーズ
雨格子の館 一柳和、最初の受難
奈落の城 一柳和、2度目の受難
氷の墓標 一柳和、3度目の受難
Continuation from last page. 05-3 https://no-value.jp/game/35956/
概要・3
『氷の墓標 一柳和、3度目の受難』は2010年2月25日に日本一ソフトウェアから発売されたPlayStation Portable用ソフトで、推理アドベンチャーゲーム。
一柳和の受難シリーズの最終作。
あらすじ・3
『奈落の城』から数ヶ月後。
相変わらずトラブルに巻き込まれやすい大学生・一柳和。
和は『奈落の城 』で知り合った東欧の貴族、アルノルト・フォン・ルロイ伯爵に招かれて、親友の日織と共に再び、ヨーロッパを訪れる事に。
ルロイ家の分家・シェードレ男爵家の前当主デリアの相続人探しに奔走していたアルノルトは和に相談があると、シェードレ家所有の湖畔の城に二人を招いた。
ルロイ本家の執事・エレノアに案内され、湖上に聳え立つ館を訪れる2人。
アルノルトが公務から戻るまで、離れである『氷の城』『湖上の棺』とも呼ばれる館で待っていてほしいとの連絡を受けた和と日織だったが、その館の霊廟には悪魔を封印したという初代当主デリアの伝承があった。
『この館は、自らを犠牲にして悪魔を封印した
令嬢・デリアを弔うために建てられた霊廟である』
不穏な予感を胸に、和は3人の相続候補者に出会う。 彼らとの語らいの中、突如起こる異変。 赤く染まった湖と、岸に転がる白い手。 そして、その手には1枚のメモ――
『霊廟に眠るのは、悪魔。眠りを妨げるものに呪いあれ』
与えられた期間は3日間――湖上の館を舞台に、3度目の事件の幕が上がる。
余程、前回で懲りたのか安定したゲームシステム
システム面は前作から大進歩。格段に快適になった。
なんと、証言が自動でメモされていく(和メモ)。
前作が「プレイヤーにメモを取らせる仕様」だったのに比べて素晴らしい進歩。
メニューからいつでも確認可能。
従来のシステムは継続でプレイに無理はない。
また、攻略が格段に楽になるイージーモードを初搭載。 (過去作の移植版にはある)
イージーモードだと
- ゲームオーバー後にヒントメッセージが出る。
- キーワードの重要度によって、色が変化するので、どれがフラグなのか目安になる。
- 現場調べの時に、重要な物証にカーソルを合わせるとカーソルの色が変化する、基本的にはこちらのモードでプレイするとストレス無しでプレイ可能。
諸々が逆転した三作目
多少、システムに粗があったが良シナリオだった過去作に対し、今作のシナリオはボリュームダウンしている。捜査期間が3日で、約一週間だった前々作や前作より大分短い。
1日目に小さな事件とかクローズドサークル化とかの前振りがあって終了。
2日目からやっとまともな捜査ができるようになる。
しかし、2日目すら「キーワード会話」で分岐条件満たすの必死になって終わってしまう。
しかもそのフラグ立てが稀に見るほどシビアで、シリーズ恒例のくだらないこと聞いたりして遊ぶ余裕はなし。
ちょっと間違ったキーワードで会話しただけで時間が足りなくなるとか、会話可能回数が足りなくなるとかザラ。計算し尽くして巡回しなきゃいけない。
シリーズ全部に言える事かもしれないが、簡単なヒントで良いから全員の大凡の居場所を事前に知れるシステムが欲しい。
分岐も前作より大幅に減った。
キャラ数も日程も減っているので仕方ないのかも知れないが。
今回の肝はルートによって、被害者と加害者が変わる事。
そのルートフラグ立てが殆ど「2日目」に行われる為、フラグがそれぞれかぶってたり、逆に満たしてはダメだったりと、攻略を見なくてはまず不可能な理不尽さである。
キャラゲーの側面があるのに掘り下げの余裕が無いのも辛い。
総評・3
どうも、事件の流れからして、おどろおどろしさが足りない。
・雨格子→主人公が「予定外」の闖入者。 あとは全員芝居のために集められたお互い顔見知り程度の役者同士。
それまで和やかだったが事件発生で全員ギスギスに。
だが、なぜか一人が部外者である自分に味方してくれ主人公は疑心暗鬼に…。 生き残り脱出するためにそいつと協力し合い解決を試みる。
・奈落→招待された主人公だけが初対面。
あとはみんなが親戚だったり懇意だったりで自分だけ外国で蚊帳の外。 その上序盤で相棒が行方不明の孤立無援状態で事件発生。
みんな仲良しなので誰を疑っていいものやら…。だが行方不明の相棒を見つけるためにも勇気を出して解決へ乗り出す。
こんな感じだから不気味だったのに、今回は
・墓標→主人公と相棒は奈落の時の友人に招待されて遺産相続者の見定めへ。
当然二人は遺産相続候補ではない。そして他は全員がお互いほぼ初対面でメイン3人が全員遺産相続候補者。
最初から(一人除いて)全員でドロドロギスギスみんな怪しい…。 なにかしでかされちゃたまらないし、流れ的に各事件の犯人を探すことに。
こんな状況なので、ぶっちゃけ事件が起きても驚かない。
これまでのシリーズでは「なぜ殺されなくてはいけないのか」「こんなに和やかなのになぜ事件が起きるのか」わからないまま連続殺人が起きて、仲の良かった人たちが無残な死体と成り果てていくのがショックで怖かった。
みんな結束してるはずなのに、事件は止まらない所が不気味で精神的に追い詰められたのだ。事件阻止を含めた、この辺りの醍醐味の欠如は痛い。
後述
結論から言えば、3も悪くはない。
単独作品として見れば、フラグの建て方にさえ慣れればむしろ良いゲーム。
────が、シリーズとして見たら、やっぱり物足りない。
長期シリーズの弊害か、連作の場合「三作目」が悪くなる、という俗説通りか、1・2に比べてファンからの3の評価は低い。
まぁ、三作目になって相応に成長した感のある和に会えるのは嬉しい。ここまで来るとゲームの出来よりも、キャラのその後が気になるのも確かな訳で。
END.