神が語らう備忘録 2話「彼女と運命の連れない関係」

藤御堂家私設護衛部隊”クインテット・ブレイズ”所属、斎木真。

それが藤御堂家次期当主である悠華の一番気が合う彼女の肩書だ。

それゆえ主人である悠華にこのような友人のような距離感で接することを関係各位に黙認されている。

しかし彼女がもたらすトラブルはあまりにも破滅的であった…今までどれほどの不都合が彼女によって引き起こされたかを誰もが思い出したくないところだ。

機密情報の意図的漏洩、人員や実務装備の私的占有、事案の安請け合いによる現場の慢性的疲弊。

数えきれないその振る舞いは関係各位から「歩く破綻要因」と称され現在もその評価は変わらないモノだ。

だがそれだけの不都合要因を不問にせざるを得ない彼女の固有異能、「現実を”嘘”にする能力。

それは物理的事象改変、つまり実際に起きたことを都合のいいように変える事が出来る力。

正に運命や宿命をも捻じ曲げるとされる力だ。

そしてその能力に飲みこまれず平然とその力を振るう異常者。

それが”フェイクヴィジョン・ブレイズ”という二つ名で恐れられる斎木真という少女の実情だ。

言うことを聞いてくれる時は頼もしいことこの上ないのにな…

悠華は自分の護衛部隊で一番頼りにしている彼女をチラッと見た後、真の独断専行の提案を取り消した。

これ以上彼女に振り回されていては私だけでなくお父様やお母様、ひいては藤御堂家全体が財団に睨まれることになる。

悠華の心痛は周りの黒服達にもありありとわかるレベルのものだったが、なんとか呼吸を整えて愛しき相棒へ一言釘を刺しておくことにする。

”できれば私が把握できないところではやらかさないでね?”

悠華が何とか口にできたその言葉は更なる悲劇の引き金となるだろうという予感を真以外の全員が共有することとなった。

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しなちー

アニメやライトノベルを1990年代から没頭している古参オタクです。 様々な作品から感じた事や個人的創作論、私なりの世界観を舞台としたショートストーリーなどを発信していきたいと思います! よろしくお願いします!

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