千里輝山平和財団…通称サザンピース・プラチナ・ユニオン。
それは環太平洋経済ネットワークを運営し、その影響力は各国の財界はもちろん政界の重鎮すらその意思決定を無視できない「世界の調停役」として語る者すらいる絶大なコミュニティだ。
そのネットワークの中でアジア圏の要衝のひとつである日本には財団のキーパーソンとなる7つの旧家がある。
それぞれが統括する分野を持ち、異能を持つ者の身分保障元となり日常を支え、時には事案終息の為の荒事を担当させる後ろ盾を担っている。
その中で悠華は「治安維持と有事の際の調停役」を担う藤御堂家次期当主としてアジア圏の采配を任されているのである。
いつも幼いころ見続けてきた父や祖父の背中。
いつでもその背中に希望をもらっていた悠華は自分も早くそんな大人になりたくて任務の現場にちょくちょく入り込み、その度に怒られていたものだった。
それでも自分を叱責する父や祖父の目には愛する者への愛情が溢れていたように思う。
それは人の幸せと平和を背負い護る私の理想の大人像の原型となった。
今では祖父は前線を退き、父は現場の荒事から身を引いている。
そして今度は私が皆の日常を護るのだ。
そんな幼い日の決意のままに今悠華は前線指揮を務めている…我が身に宿った「救済の炎」の異能と共に。
涼やかな追憶が意識の中を駆け抜けていく。
悠華の意識は眠りの世界からいつもの日常に引き戻されていった。