神が語らう備忘録 15話「示された指針と現実性の脆さについて」

…なんとか滞りなく済んだようだな。

男は諜報班からの報告を受けて胸を撫でおろす。

いつもは無機質なこの執務室でこんな晴れやかな気分になることは無かった。

それに加えて”黒曜石の瞳”の具体的運用ルートが脱法行為に厳しい藤御堂家に特定されたと報告があったとき、正直生きた心地がしなかったものだ。

そもそも財団の治安維持関係のポストをほぼ独占している藤御堂の家は前から目障りだった。

先代当主から組織のグレーな活動を睨まれ、現在の当主からは実態権限を取り上げられて些末な不都合処理ばかりをさせられる日々。

どれだけ肩身の狭い思いをさせられたか思い出したくもないほどだ。

今回藤御堂のお嬢様を排除したことで反体制派にも協力を仰ぎやすくなるはず。

そうすれば”黒曜石の瞳”に限らず「禁忌の果樹園」から生産される魔術マテリアルの流通利権を我らが握ることができよう。

男はこれから得られるはずの栄光のヴィジョンに酔いしれ、勝利の美酒を煽る。

あの「救済の炎」、”フレイム・サルヴァシオン”の二つ名の元に粛清された仲間たちにもようやく報いることが出来るのだ!

男はこれから始まるに違いないバラ色の人生設計を思い描いて悦に入っていた。

これからボブカットの死神が致命的破綻要因を持ち込むことも知らずに。

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しなちー

アニメやライトノベルを1990年代から没頭している古参オタクです。 様々な作品から感じた事や個人的創作論、私なりの世界観を舞台としたショートストーリーなどを発信していきたいと思います! よろしくお願いします!

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