…なるほど外部向けプロフィールで取得できる程度の情報開示。危機管理能力はある方なのかな?
真は品定めの最低ラインが満たされていることを確認して解説を始めることにする。
「基本的に私の異能の基本的運用は”その場の最適解を最大の破綻要因に変える”というものでね。世界の理の意味に干渉することなんだ。ここまではわかるかな?」
真の発した言葉の意味が何ひとつ理解できない男は狼狽して目を彷徨わせる。
うむ、これ以上解説を進めるのは自分の破綻要因を生むことになるな。
しかし…
自分の理解が及ばないことによる恐怖に歪んだ男の反応があまりにも愛らしく感じた真はさらなる情報開示をすることにした。
「そう、あなたの上官である彼は長年不整脈や高血圧に悩んで薬によるギリギリの生命維持をしていたようだね。だから”薬が症状に効いている”という現実を「嘘」にした。それによって薬の効能が破綻要因になったわけ。」
淡々と事実を並べる真の話を聞いていた副官の男は想定していたモノが最悪な事態であることを許容できず、呼吸を荒くしていた。
真はその男の様子をなんとも愉快そうな様子で解説を続ける。
「現状の前提は理解してもらえたかな?まあわからない方が精神的負担が少ないかもしれないけど。」
あからさまに自分に対して警戒感を露わにしてきた男へ真は慈母のような笑顔でさらなる事実勧告を続ける。
最早この執務室は人間の平常心が保たれるような場所ではなくなっていた。
