生物の生存に適さない密度の空気がこの執務室に満たされていた。
副官の男は酸素を自分の肺に取り入れることすら難しいような様子だった。
過呼吸を起こして卒倒するのも時間の問題な状態な男の様子を満足気に見ている真は淡々と事実を通告していく。
「だからね?あなたが藤御堂家へあのタイミングで襲撃部隊を送り込んだこと、本家全体を異形化の結界で包んだこと、悠華を孤立させたこと…全てがあなたの破綻要因になっているんだよ。”嘘”だと思うなら部下たちに連絡を取ってみるといい。現地で起きていることを常人が理解できるとは思わないけど、ね?」
あからさまに血の気が引いた男は無意識のうちに携帯していた護身用の拳銃を抜いて、真の眉間へ銃口を向けた。
真は精一杯の気力で尚自分に抗おうとする男へ慈愛の笑みを崩さない。
男は今自分が持てる最大の護身力が何も解決してくれないだろうことを悟りつつも祈るような気持ちで引き金を引く。
それは彼が選べる最後の選択肢であり唯一の可能性。
しかし放たれた銃弾が彼のこれからの未来を切り開いてくれることは無かった。
