華やかに飾り付けられた門をくぐったら中はハリボテの空洞だったなんてよくある話じゃない。
彼女はそう切り出すと愚痴をマシンガンのごとく吐き出し始めた。
悠華は自分が行きつけのホテルのラウンジで始まった愚痴暴露大会に巻き込まれていた。
悠華の昔ながらの友人であった彼女もいわゆる「いいとこのお嬢様」なのだが、最近は年頃になって地元の社交界にデビューしたらしい。
そして地元の老舗企業の御曹司と良い仲になって…とかいうよくある定番パターンだ。
こんな事をしている場合じゃないのにな…
ちょっとした気分転換になったらいいと思って業務以外の関係者を選んだのに、これでは折角のオフタイムが台無しだ。
何となくストローをかき回してアイスティーのグラスの氷がカランと音を立てる。
それが今の悠華の最大限の自己主張であった。
そんな手持無沙汰な様子の悠華に彼女はより強い非難を浴びせる。
「悠華、ちゃんと私の話を聞いてくれてる?これは貴女も遠からず通る道でしょう?」
ついに彼女の言葉はお小言になってストレス要因としては十分になっていた。
完全に聞き流しモードに移行した悠華を見て彼女は落胆の色を見せて、ようやく話題の転換をした。
「そういえば聞いた?あのGRN社が異能者雇用を公式に行うって。」
悠華はあまりにも藪から棒な話を振られてぎょっとする。
”グローバル・リテラシー・ネットワーク社”。
世界的なビジネスネットワーク運用や政財界の折衝をも手掛ける世界的グループ企業だ。
そしてあらゆる業種の商標登録をもかなりな数管理していることから「知的遺産統制機構」などと呼ばれることもある企業複合体でもある。
その業務によって生じる様々な不都合対処に異能者が関わっている、という噂が回っていたのは事実であった。
それを表立って公表する意味があるのか?
常人では持ちえない能力を持つ人々への偏見は未だに根強いモノ。
不都合対処の現場に直接携わる悠華にとってはだいぶデリケートな話だ。
「それどこの媒体で発表されたの?今確認できる?」
悠華の食いつきぶりに彼女は驚きつつも、自分の通信デバイスを差し出して見せる。
その画面に映し出されていたニュースサイトに踊る見出し。
”GRN社ついに異能者の囲い込みを公式発表!日常の治安維持に不安の声続出!”
悠華はその記事を見て意識が凍り付く思いがした。
「これからの日常は特別である自分たちが創る!」という内容が意気揚々と綴られていたからだ。
悠華は考えがまとまらず絶句するしかなかった。
運命の歯車を回しだした当事者たちの誇らしげな顔が目に浮かぶような気がしていた。
