神が語らう備忘録 43話「流れ着く因果の先で取るべき選択とは?」

不都合なことなど塗りつぶしてしまえばいいじゃないか。

あまりにも直情的な言葉が議場に響き、その言葉をどう受け止めればいいか誰もが困惑していた。

藤御堂家が運営しているグループ企業の経営陣が集まったこの場は現実のすり合わせを行う大事な時間だ。

それゆえに各々が複雑な事情を抱えており、不都合がそんな簡単に対処できるモノではないことは身に染みてわかっている。

それだけに誰もが真意を測りかねて問いただすことをためらっていたその様子を見て、藤御堂宗家の一員としてこの会議に参加していた悠華は暗中模索状態の打開の為に発言の主へ質問を投げてみることにした。

「梅本相談役…あなたが思い描く現実はどんな事案を想定しているのですか?現状の問題の中そんなに簡単に処理できる問題があるとは思えませんが。詳しい説明をお願いしてもいいですか?」

悠華の言葉は角が立つ直前の際どいものだったが、名指しで呼ばれた男はにこやかに対応してきた。

「お言葉ですが悠華お嬢様…私ども桜梅桃橘の四家はアジア圏の異能者案件を今まで取りまとめてきた自負がございます。そして藤御堂家の外部顧問としても微力ながら協力させていただいております。ですが最近の藤御堂宗家の方々の判断のハッキリしない姿勢がどうも気になるところ。どうでしょうこの場で現状のスタンスとこれからのヴィジョンを確認させてくださいますか?」

梅本と呼ばれた男は悠華へ品定めの視線を絡ませ、その一挙一動を興味深く観察していた。

悠華はその気味悪さに辟易しながらもその感情を抑えて返答すべき内容を検討する。

…確かに現当主であるお父様が不在の今、外に打って出る事は極力避けたいところではある。

しかし斎木家や小山内家が独自の利権ネットワーク構築を始めている情報がキャッチされている現状では静観は一番の愚策だろう。

そして桜梅桃橘の四家が持つという「聖典」と呼ばれる魔術的オーバーテクノロジーの集大成を収めた禁書。

それは今の異能者戦力の均衡を崩す代物だ。

それに今は藤御堂家の担う表の秩序のために協力してくれている四家が自分の役目をどこに定めるかで情勢はだいぶ揺れ動くことになる。

ぐるぐると堂々巡りを続ける悠華の思考はいつになっても結論を出してくれず迷ったままだ。

その様子を観察していた梅本はため息をついて議場にひとつの提案を出す。

それを聞いた列席者は明らかに動揺しざわつきだした。

改めて悠華に承諾を求める梅本の視線…その笑みは善意で舗装された地獄への道を先導する死神のものであった。

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しなちー

アニメやライトノベルを1990年代から没頭している古参オタクです。 様々な作品から感じた事や個人的創作論、私なりの世界観を舞台としたショートストーリーなどを発信していきたいと思います! よろしくお願いします!

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