神が語らう備忘録 44話「選別による礼賛、特別でない賞賛」

いつもは心地よく感じるはずの風が生ぬるいモノに感じている。

まるで自然環境まで自分を責め立てているような気分だ。

悠華は自らの私的なコネクションにより用意されたプライベートラウンジで資料の山に埋もれていた。

今把握するべきことは山積みで判断しなければならないことは途方もないほど散らばっている。

”黒曜石の瞳”を始めとした魔術的マテリアルがもたらす治安悪化懸念。

桜梅桃橘の四家による”聖典”運用方針がアジア圏のパワーバランスを崩しかねない問題。

グローバル・リテラシー・ネットワーク社による異能者囲い込みによる政財界への影響の調整。

小山内家や斎木家が独自の利権ネットワークを構築しようとしていることで起こる日常体制崩壊の危機。

どれもが一刻の余地のない非常態勢を持って対応するべき危急の事態だが、生憎この身はひとつで動かせる人員もリソースも限られている。

特に”聖典”に関しては秘匿されている情報があまりにも多く、魔術的素養と先天的異能に関する専門知識が無ければその脅威には対応できないという話。

今持っている断片的な情報から得たものは「現在の汎用魔術を成立させた超越者が記した世界レベルでの事象改変を可能にする力を秘めた禁書」ということと、「異能者の覚醒を促して超越的な存在に至る方式が記されている」ということだ。

あまりにも非現実で受け入れがたい絵空事を念頭に置かなくてはならない事態に頭が痛いが、これから対処しなくてはならない事案はこのレベルが基準になってくるだろう。

適応できなければ私だけではなく藤御堂家の関係者たちも誰かが仕組んだ運命に隷属しなくてはならなくなる。

そして世の中は必ずしも弱肉強食だけでは回っていない。

何でも圧倒的な力で組み伏せればいいわけではない…適者生存こそ今の世界の現実だ。

プールサイドのテーブルに置かれたアイスティーを一口飲んで喉を潤すと、悠華はグラスの中の氷がすっかり溶けてしまっていることに気付いた。

苦笑しながら結露だらけのロンググラスをテーブルに置いて一呼吸置いて悠華は立ち上がり伸びをする。

どんな問題もタイミングと巡りあわせが大事だよね…

悠華はこれからの台本のキャスティングを思い浮かべながら自室に戻ることにする。

今から上演する舞台がいつものメンバーと最後まで楽しく演じきれることを期待して。

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しなちー

アニメやライトノベルを1990年代から没頭している古参オタクです。 様々な作品から感じた事や個人的創作論、私なりの世界観を舞台としたショートストーリーなどを発信していきたいと思います! よろしくお願いします!

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