だから理想的な結末というのはね、イレギュラーをもねじ伏せる優れたシナリオがあってこそたどり着けるモノだと思うんだ。
恍惚とした表情で語りつくした彼はこの場の承認と賞賛を浴びて満足そうに微笑んだ。
彼の描いた理想像は今や世界中で夢の土台となり様々な物語のひな型として活かされている。
誰もが自分の空想を理想的なシナリオとして具現化できるその枠組みは神話の時代の奇跡を思わせる可能性を人々に抱かせることとなる。
そしてその理想像の在り方は自然と神格化され憧憬の対象となった。
”聖典”という呼び名が生まれたのはごく自然な流れだったのだろう。
様々な不可能を覆していったその理想像はやがて「現実」の意味すら定義していくことになる。
著者である彼の思惑をも超えて影響力を拡大し続けるその在り様は自律した自我を持ち、世界の様々な価値を塗り替えていった。
ゆえに数少ない”聖典”の原本を持つ者はやがて崇拝の対象となり、その内容は機密情報となって内々に秘匿されることとなる。
その後の時代に「観月会」と称されるようになる、失われた神話の時代の一幕が語られた日の事だった。
