この手に抱いたもの全てが真実でなくとも構わない。
悠久に流れる時の中でいつしかそのような想いを持つようになったのは自然なことなのかもしれない。
そして理不尽ではない自然などあるわけもない…その上で平穏を望むのは傲慢なのだろうか?
緩やかに過ぎていくこの世界の中でも私以外のモノは等しく朽ちて無に帰っていく。
それは親しき友もかつて戦った敵であろうとも同じこと。
それでも摂理の望むままに全てを差し出す気は毛頭無い。
遥か昔に示すべき意思の形と道標は打ち立てられていたのだから。
私はそこで思案を打ち切ると寂れた玉座に身を預け、再び眠りの中へ沈んでいく。
この謁見の間にある精緻な装飾の燭台に灯された明かりが怪しく揺らめいた。
その明かりが照らすモノはこれからの新時代を望む世界が見るユメなのかもしれなかった。
「恐れながら令皇陛下…神具である茨の枷は縛られた者の可能性と霊的資質を締め上げるもの。処罰ではないこと、ましてや統制の為に用いるなど今取りうる選択肢の中でも最も下策ではないでしょうか?」
リディアの放った言霊は謁見の間の空気を騒がすのに十分な熱量を保持していた。
そしてその直情的表現はこの場に列席した有力者達や各地の領主の機嫌を損ねるのに十分なモノであり、誰もが眉をひそめている。
令皇傍付きの護衛達がリディアに刃のごとき敵意を突き刺してくる…それでも彼女は「進言」を止めようとはしない。
この場で楔を打っておいたという事実が何より大事だ。
これから起こる「現実」を指摘していたという証人が私の何よりの武器となる。
リディアは自分の使命と覚悟を再度確認し、我が主に視線を注ぐ。
その様子を警戒気味に眺めていた令皇と呼ばれた青年はリディアの提案した未来に興味を示し、「進言」を続けることを許可した。
その言葉が紡ぐ運命で何が起きえるのかという期待を密かに胸に秘めて。
