眠りに落ちる前のまどろみは安息の担い手であり夢の器。
その中では永劫の平和も完璧な調和も平然と成り立つ至上の楽園が広がっている。
…そう考えたいのは人ならではの感情だろう。
現実のすぐ側にありながら中のモノは何も外へ持ち出せない禁忌の花園。
その地は完全であるが故の満たされなさを今日も私へ突き付けてくる。
まるで充足すること自体が終わりの始まりを呼ぶという確信と持論を携えて。
「彼女とはまだ連絡が取れないの?しょうがないわね…このコミュニティの創設者である自分の立場をもう少し自覚してほしいのだけど。でもとりあえず今いるメンバーでこれからのプロジェクトの草案ぐらいは決めておきましょうか。」
楓はクライアントから提供された資料と要望書の束をテーブルの上に広げて見せる。
メンバーのデバイスの中にもコピーされたデータはあるものの、実体で目に見える形であることは大事だ。
「まずプレゼン規格の調整と運営リソースの計画的運用について。この議題についての皆の意見を聞かせてもらえる?」
楓がそう問いかけると様々な意見が宙を飛び交い始める。
組んだ戦略を誰が実用化し指揮するのか?
協力してくれるコネクションのルートにぬかりは無いのか?
人材や資材の調達セクションに負担がかかり過ぎではないのか?
等々。
様々に出てくる意見や要望はまっさらなキャンバスにそれぞれの想いを乗せた色彩を載せていく。
そうして形作られていく理想像の絵面がこれからの救いとなることを楓は願わずにいられなかった。
我らの船が果てしないブルーオーシャンの藻屑となることの無いように。
