時の流れを経ても生き続けるかたち その1

ふと気づけば眠っていたようだ。

ここは新緑が群がる山のたもと。

季節は紅葉が乱れる秋。

洋服を三枚は着ないとそろそろ肌寒くなる季節である。

私は仕事に息詰まりを覚え、休暇を取ってここを訪れた。

ちょうどよくベンチがあったので、休憩しようと目を閉じていたら、いつの間にか少しの間眠っていたようだ。

秋という季節は、人に寂しさを与える季節だと私は思っている。

あんなに解放感があった夏から、月日が経つ毎に肌寒くなり、木々の葉も枯れ始める。

車道は落ち葉でいっぱいになり、冬は機会を伺うように一段と気温は下がっていく。

それらが人に寂しさをもたらすのだと思う。

春夏秋冬は、温帯の日本独特の気候だ。

もしくは、緯度が日本と同じ位の位置にある国だけだろう。

私は秋から冬にいつも体調を崩す。

精神疾患を患っており、服薬もしている。

だから今年の秋は体調を崩さないように先手を打って、ここを訪れた。

ここは懐かしい場所。

私がまだ幼い頃、幼馴染と一緒によく訪れた場所だ。

「山の中には入っちゃ駄目だよー」

と、いつも私の母が注意してくれた。

あの子は元気に過ごしているのだろうか?

小学校を卒業するまでは一緒の学校に通っていたのだが、中学校に入学する時に転校してしまった。

最初の頃は頻繁に文通をしていたのだが、次第にその頻度も減り。

気が付いた時には全く手紙のやり取りを交わしていなかった。

私が送った手紙の返信がこないまま時が経った。

手紙は十三歳になる年から十七歳になる年までの5年間、月に1~2回のペースで交わしていた。

手紙には何回も「二十歳になったら会おうね」と、お互い書いていた。

しかし、その約束も果たせぬまま時だけが過ぎた。

私がここを訪れたのは彼女との思い出に浸るのと、彼女の消息を知りたいという目的があった為だ。

私は宮城県の仙台市市街地に住んでいるのだが、彼女は北海道の札幌に引っ越しをしたみたいだ。

そこで文通でやりとりした手紙を確認すべく実家のこの場所まで来た。

何年振りかに実家に帰り懐かしさを覚える。

玄関を開ければ右方に置いてあるブルースター、両親の知人から頂いたお土産物、私の友人が海外旅行に行って来た時にお土産で貰った、カンガルーの置物、私が生まれた時には既にあった壺、私の実家の玄関を彩る物もの達だ。

私の部屋は二階にある。

一段一段昇ると床が軋む音が聞こえる。私がかつて過ごした自分の部屋に行き、クローゼットのボックスの中に大切に保管していた彼女とやりとりした文通を全部出す。
中身を何通か確認する。

その2に続く。

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花の母としての気持ち

初めまして。花の母としての気持ちと申します。 好きな人物を模写、デザイン、詞、小説を書くのが好きで麻雀も好きです。 普段手が空いている最中にやっていることではまっている事はリズムを心の中で刻んだり、即興で簡単な歌を作って 鼻歌を歌ったりする事。 苦手な事は、面倒くさい作業をすること。これは今克服しようと努力している最中です。 どうぞよろしくお願いします。

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