僕の目を見て、話を聞かせて 4

 ただかったるいから、なんて理由でサボるのは初めてだ。普段鍵がかかっている筈の屋上へのドアはなぜか開いていて、恐る恐るドアを開けて屋上に出ると、菅井さんが僕に向かって手招きしていた。キョロキョロと辺りを見回してから、菅井さん以外誰もいないのを確認して、ホッと息をついた。

「よーこそ」

『ちゃんと来たか、てっきり来ないもんかと』

 菅井さんはどこか嬉しそうに笑っている。僕は彼女の隣に腰掛けると、そっと屋上の縁から顔を出し下を眺めてみる。ドン、と背中を押され、ムッとして後ろを振り返ると菅井さんがケタケタと笑っている。

「そんな怒るなって! ちょっとした冗談だろ?」

『コイツも怒ったりするんだな』

 いくら柵があるとはいえ、危なくないわけじゃないんだから、こういう場所でふざけないでほしい。ドクドクと早まる鼓動を何とか落ち着け、溜息を吐いていると相変わらず菅井さんが僕を見ているのを察する。

「なんで屋上の鍵が開いてたの? 普通閉まってるもんじゃないの?」

 僕の質問に菅井さんは視線をそらした、……さては菅井さんの仕業だな? まぁ屋上に来るのなんてサボる目的くらいしか思いつかないし、普通閉まってるもんだと先生や生徒も思ってるだろうから、思う存分サボったって気付かれないんだろう。

「サボるって具体的に何すればいい?」

 基本的に授業はきちんと受けてきたから、こうやってサボるって何をすればいいか分からない、保健室にはベッドがあるから寝ててもいいんだろうけど、屋上となるとあまり選択肢がないようにも思える。何すればいい、ってサボればいいんだよ、菅井さんが不思議そうな顔して僕を見るから、僕の方がおかしいんじゃないかと錯覚してしまう。

「そういや、佐竹って下の名前なんだっけ?」

『いつまでも佐竹、ってのも味気ないし』

 通りで今まで心の声でも佐竹呼びだったわけだ、則人、佐竹則人、と僕が溜息混じりに返すと、よろしく、則人、ウチは奈央ねー、なんてニコニコと笑っている。なんというか、よく言えばマイペース、悪く言えばテキトーだなぁ、僕とは正反対のタイプだ。

「則人は、普段何して遊んでんの? ずっと勉強してるってわけでもないんでしょ」

『ヤバい、クラスの奴らと話すの久々すぎて、何話せばいいのかわかんねぇ』

 本読んだりゲームしたりかな、苦笑しながら返していると、ゲーム、という言葉に菅井さんは目を輝かせる。てか本って、それ遊びじゃないじゃん、なんて笑いながら、何のゲームをやってるのか興味津々みたいだった。予想通り次の話題はゲームについてだった。

「えぇっと、これと言ったジャンルは無いんだけど、アクションとかRPGが多いかな、オープンワールドとか死にゲーは苦手」

 分かる、分かるよ、とうんうんと頷いている。最近のゲームってみーんな似た感じで、難易度高すぎたり、自由だったらいいみたいな風潮あるしな、とまさに僕が思っていることを菅井さんは話し始めた。普段教室では見れないような、熱く語っている菅井さんを見ると、こっちまでその熱量がうつってくる。暫くそうやってゲームについて話していると、放課後ゲーセンに行くか、どっちかの家に集まってゲームしよう、なんて流れになる。

「さすがに家はまだちょっと」

 そう言って僕が苦笑すると、じゃあ学校近くのゲーセンは? なんて提案されて、それならまぁ、と頷かざるを得なかった。屋上で放課後まで話した後時間差で教室に戻ると、先生につかまる前にさっさと学校から出ていった。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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