「愛しのアクアリウム」~第三話~

第三章 「新しいスタートは二人で」

ー夜ー

「ノエル君、本当に人間の学校に行くのかい?」和也叔父さんは心配そうにノエルに声を掛けた。それはそうだろう。ノエルは人間になったといえ、シャチなのだから。
「はい。俺、茉莉華が虐められないか心配だし、俺もボディーガードとして一緒に学校に行きます。」ノエルは、凛とした顔で言った。
茉莉華も心配しながら、学校はどういうことをする場所かをノエルに教えた。
「いい?私達人間が通う学校はね、遊びに行くところじゃないの。大人になって社会に出れるように勉強して学ぶところ。泳ぐのもプールで夏しか泳げないし、沢山泳ぎたいなら水泳部に入るしかないんだよね・・・・。それでも学校に行くの?」

「ああ・・・・。別にショーは、姉ちゃんたちだけでもできるし、休日だけでもいい。学校については、小さい頃婆ちゃんが言ってたからわかる。それよりなにより、茉莉華を悪い奴から守りたいから。」ノエルの決意に茉莉華の胸がきゅんと鳴った。
「ノエル・・・・。」さらに胸が締め付けられるほど鼓動が早くなる・・・・。相手はシャチなのにこんな気持ちは初めてだ。

「ようし、ノエルの決意は分かった。明日、二人が行く新しい学校に転校手続きしてこよう。ノエル君も茉莉華ちゃんも見学しに行くかい?」と和也叔父さんは立ち上がって言った。「はい。」と二人は返事をし、翌日新しい学校に見学しに行った。
そして3日後・・・・・・。
転校の手続きをし終わり、いよいよ新しい転校先の学校にノエルと登校した。茉莉華とノエルが通う新しい学校は、中高一貫校で海沿い側にある学校だ。窓から見る海の景色も綺麗に見え、海風も入ってくる。ノエルは人間達の初めての世界に目を輝かせていた。
「すげぇぇぇっ・・・・!ここが人間が通う学校という所か・・・・!」
「もう。ノエルったらはしゃぎすぎ。新しい学校楽しみだね。」茉莉華も新しい学校での生活にドキドキしていた。

すると茉莉華とノエルが歩いている後ろでこの学校の女子生徒がこそこそと話をしていた。
「ねぇ、あの子めっちゃまつ毛長いし、イケメンじゃない~?」
「本当だ!!漫画に出てくる王子様みたいな黒髪イケメンだ♡あんな王子に壁ドンされたら私倒れちゃうかも~♡声掛けに行っちゃお~♪」女子生徒はスキップで足をスキップで弾ませながらノエルに近寄った。
「君、転校生?めっちゃ可愛いね!顔も私好みのイケメンだし!名前なんていうの?もし、彼女さんがいなかったら、私と付き合わない?」
「あ、ずるーい!!一人で抜け駆け禁止ー!!私もデートした~い♡」
「私も~!!」
ノエルのあまりにの美貌に中高生の女子が囲むようにたくさん集まってきた。これには茉莉華やノエルも困惑していた。それでも女の子達は、
ノエルの方へぐいぐい押しながら近づいて来る。「キャーキャー」と
黄色い声をあげながら、女の子は茉莉華に肘鉄をして睨んでいた。
「ちょっと貴女、邪魔なんだけど。どっか行ってくれない?」

ードンッ!ー
「痛っ‼」茉莉華は肘鉄の衝撃でノエルのそばから追い出されてしまった。それを見ていたノエルが「茉莉華!」と呼びながら茉莉華の顔を見ていた。茉莉華は不安そうに下を向いてしまい、「また虐められるのではないか」とトラウマになっていた。
「・・・・。どうしよう・・・・。新しい学校でもうまくやれるかな・・・。」茉莉華は、不安と緊張で震えていた。ノエルを囲む女の子は、「好きなタイプの女の子は誰」とノエルに聞いた。すると、ノエルは女の子達に向かって質問に答えた。

「俺の好きなタイプは、弱い者いじめをしないで相手思いで束縛をしない優しい子がタイプかな。あとはツイン団子ツインテールで茶髪!動物が大好きな子も好きかな。」ノエルがそう答えると茉莉華はノエルの好きなタイプに当てはまりすぎて驚いていた。茉莉華に肘鉄をした女の子や他の女の子達は茉莉華を睨みながら校舎に入った。
「好きなタイプあのぶりっ子っぽい女の子かぁ~…。」
「隣にいたあの女の子のどこがいいの?」女子達は茉莉華に聞こえるように愚痴を言いながら教室に入っていった。茉莉華はますます不安になった。
「・・・・。ねぇ、ノエル・・・・。これから私、この学校でやっていけるかな・・・・・?」手が冷たくなり、足も震えていた。前の学校でいじめられたせいで愚痴も少しトラウマになっていた。
不安そうになっている茉莉華を見たノエルは、茉莉華の緊張しすぎて冷たくなった手をぎゅっと握った。
「大丈夫だって。確かに色んな人がいる所だから不安になるよな・・・。でもその時は、俺が茉莉華を全力で守るから!いつもの茉莉華でいればいい!」ノエルが励ましたおかげで茉莉華の心は少しほっとした。その後二人は校舎内に入り、先生に教室を案内された。

茉莉華さんとノエル君ね。貴方達のクラスは1年3組。1年生の教室は、こっちよ。私は、1年3組担任の浜田渚沙よ。よろしくね。事情は和也さんから聞いているわ。」茉莉華とノエルの担任は色白で美人でクールでかっこいい女性の先生だった。
教室に案内され、クラスのみんなが落ち着くまで教室のドアの前で待機した。教室内は、にぎやかでガヤガヤしていた。
「はーい。みなさん静かに!これからこの学校に転校してきた新しいクラスメイトを二人紹介しまーす!優しく歓迎してくださいね~!」渚沙先生がクラスのみんなに声掛けをすると、3組のクラスメイトは茉莉華たちの方を見て、拍手しながら暖かく歓迎した。それと同時に茉莉華とノエルも緊張しながら教室に入っていった。教室に入ると、男子も女子も盛り上がっていた。
「きゃー!イケメンが来たー!!」
「可愛い子が転校生なんて…、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」クラスメイトのあまりの盛り上がりに二人は少しびっくりした。

「静かに!茉莉華さんとノエル君がびっくりしてるでしょ!!さぁ、二人共自己紹介をして。まずは、茉莉華さんから。」
「は、はいっ!」茉莉華は緊張しながら返事をした。
「は、初めまして。浦海 茉莉華です。千葉市立江ノ川中学校から来ました。得意なことは水泳と料理です。よろしくお願いします。」と茉莉華が自己紹介をするとクラスメイトが温かく拍手をしてくれた。茉莉華の緊張も安堵にかわり、気持ちも安定してきた。
「次は、ノエル君ね。」と先生が言うとノエルも返事をして、自己紹介をした。
「初めまして!浦海 ノエルです!俺は、訳があって人の姿になっているシャチです。得意なことは運動と泳ぐこと!よろしくな!!」とノエルが自己紹介を終えると、クラス内はざわついた。それは、ノエルが自分の正体はシャチだと明かしたからだ。
「シャチ・・・⁉もしかして、ノエル君ってあの水族館にいるあのシャチなの⁉」
「そんなの嘘だろ⁉ノエルがシャチだなんて・・・・・。」茉莉華とノエルは気まずくなってしまった。
「ど、どうしよう・・・・・。ノエルが言ったせいでクラスのみんなに怪しまれてる・・・・。」すると先生がノエルを庇うようにクラスのみんなに言った。

「ノエル君は、茉莉華さんの親戚さんが経営してる浦海水族館にいるシャチなのですが、その中でも人間になれる不思議なシャチなんです。だからって虐めたりしないで下さいね。あと、茉莉華さんにも優しくしてあげてね。」
「はーい!」クラスのみんなに理解してもらった後、茉莉華とノエルは自分の席を先生に案内してもらった。
「二人の席はここね。茉莉華さんは窓際の方で、その隣はノエル君。二人とも仲良くね♡」茉莉華とノエルはお互いに座る席に座った。
「ノエルと隣の席・・・・・。顔イケメン過ぎて直視できないけど・・・・、頑張ろう・・・・。」
「茉莉華と同じ席か・・・・。何か緊張してしまうな・・・・・。」二人はお互い顔を見れないまま、顔を赤らめていた。

ホームルーム後になり、授業の開始時刻になった。1時間目は、社会の授業で、歴史をやるそうだ。チャイムと同時に社会担当の50代位の男の先生が教室に入ってくる。
「はい。皆さんおはようございます。これから社会の授業を始めます。今回は歴史です。じゃあ、教科書の30ページ開いて。」先生の合図とともに教科書を開く。しかし茉莉華は、ノエルに人間の勉強がわかるかどうか不安だった。ノエルにひそひそ声で声を掛けた。
「ノエル、中学の問題ちゃんとできる?」
「ああ、大丈夫さ。この学校に来る前に茉莉華と勉強したからな!」ノエルは、平気そうに笑顔を見せた。そうしているうちに授業も進んでいく。
「今日は、5月の24日だな。今日は偶数の出席番号の人に答えてもらおうかな。」先生がそう言うとみんなは当てられたくないため、教科書を読んでいるふりをしていた。すると、ノエルが背筋をピンと伸ばしながら「はい!」と手を挙げた。
「おっ?この問題の答えが分かるのか?お前は確か・・・・・、転校してきたばかりの出席番号34番。浦海ノエル・・・。」
「はい!飛鳥時代に活躍した人物…、聖徳太子です!」とノエルが答えた。その顔は、真面目に凛々しかった。
「おぉっ・・・・、ノエル正解だ・・・・。シャチなのに日本史が分かるなんてな・・・・・。」と先生とみんながびっくりしながら拍手していた。茉莉華もびっくりしていた。
(ノエル、転校初日から凄すぎる・・・・。人が勉強している所も覚えてるし・・・。シャチって頭いいんだな・・・・。)
答えた後、ノエルは着席して茉莉華と授業を聞いていた。その後の授業でもノエルが才能を発揮していた。社会の先生だけじゃなく、他の教科の先生も体育の先生も驚いていた。
そして昼になり、和也叔父さん特製の手作りお弁当を持って食堂に行った。新しくできた友達と共に見晴らしのいい席に座り、トークをしながら食べた。
「ふわぁぁぁぁっ・・・。緊張したぁ~・・・。でも、優しい友達が初日から沢山出来てよかった・・・・。」
「お疲れ様!二人共自己紹介最高だったよ!学校どう?」
「みんな優しくて温かくて、先生もいい先生で良かった。」
「俺も茉莉華も緊張したし、まさか俺の周りに人間のメスが沢山集まってくるとはな・・・・。」
「メスって・・・・。wwノエルの見た目の感じ、超イケメンだからな!そりゃあ女子にモテるでしょ!」
「それじゃあ、食べますか!」と言って、茉莉華とノエルを含め4人は食べ始めた。すると、ノエルが弁当を食べながら、茉莉華に話しかけた。
「なぁ、茉莉華。」
「?」
「これから先色んな事があるかもしれないけれど、お互い新しいスタートで乗り越えていこうな!」とノエルが言うと茉莉華が微笑んだ。
「うん!頑張ろうね!あと、智香ちゃん!久彦君!これからよろしくね!」
「こちらこそ!」
「あぁ!仲良くしようぜ!」と4人で笑いあいながら仲良く弁当を食べた。

ー続くー

  • 2
  • 0
  • 1

ましゅまろまかろん

アニメやゲーム、歴史などが大好きです!歴史は特に戦国時代が大好きです! 特技は絵を描くことと、卓球です。漫画やイラストなど、将来のために色々頑張ります!

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内