ドライフルーツ売り場で思い出した本の内容
皆様は、「ドライフルーツ」というとどんなものを思い浮かべられますか。
レーズンや、アプリコット、デーツ、イチジク、プルーンなどいろいろと現在の日本では販売されております。
近所の製菓材料店にてそれらを見ていると、筆者はふと思い出した事がありました。

ドライフルーツの画像
昔の英国商人が書いた文献に、会計をしてみると、振られた女性にドライフルーツをプレゼントして大枚をはたいてしまった、と書かれていたのです。
今の日本女性は大量のドライフルーツを贈られてもさほど喜ばないのでしょうが、当時は貴重品だったようです。この文献を読んだのは随分昔ですが、その当時はあまり気にせずに記憶していただけでした。今になって気になってきたので、調べてみる事に致しました。
英国ではドライフルーツの材料が少ない
検索してみると、英国は寒い気候の土地だったので、昔はブドウもイチジクも育たず、ある程度気候が適していると思われるアンズも14世紀ごろにやっと育てられるようになったため、中世のイングランド、私が昔に読んだ文献の時代と地域では、ドライフルーツは貴重品だったようでした。
今は地球温暖化の影響か、英国、グレートブリテン島でもブドウの栽培ができるようになり、英国産ワインなどというお品もあるそうです。
ということは、多種類のドライフルーツの入ったケーキや、紅茶で戻したレーズンが入ったケーキなども、ごちそうだったと推測されます。
フルーツケーキも昔はぜいたく品
そう考えてみると、各地のマナーハウスや、少し前にNHKで放送された領主様家系と思われる家に伝わっていたケーキレシピも、ドライフルーツがかなり入ったバターの少ないパウンドケーキのようなものだった理由が納得できます。日本人からすると、華やかなデコレーションケーキよりはるかに地味ですが、これはこれで豪勢なレシピだったのです。また、生クリームは日持ちがしなかった時代ですから、日常的にパーティーで食べられるケーキにも使わなかったのだと推測されます。こういった上流階級の方々は、週に一度は大規模なパーティーを行ったり、正式なお茶会を行うのが常なので、それなりに見栄を張れるのは、複雑な形のケーキ型に入った調理人の生地作りと型から外す技術が問われるふわふわのスポンジケーキか、ドライフルーツ入りで中身に凝っているフルーツケーキだったのでしょう。
そして今でも、その影響なのか、英国各地でお茶の時間に出てくるのはフルーツケーキやビスケットで、生クリームを使ったデコレーションケーキはファンシーケーキと呼ばれ、なかなかお目にかかれません。
食べ物に保守的な欧州の方々
日本人と比較すると、英国の人や欧州の方々は、食べ物にはかなり保守的に思えます。いまだに200年前の料理本がほとんど改訂されずに書店に並んでいたり、イタリアのパスタをアレンジしたものを英国の雑誌で紹介したら、レシピが間違っていると国際問題寸前になったりしています。
それが、各地の味覚の差異となり、地域おこしにもなるものなのかもしれません。日本のように、同じようなレシピの菓子が全国にあるのも何か風情がない、と筆者はたまに思っていたのですが、こういうトラブルが起こるのもどうかと考えるので、どちらにも一長一短があるのでしょう。
郷土の良き伝統は残しつつ、良いものや食材は世界に広がっていく、という方向になることを願っております。
ドライフルーツの歴史