黒髪の少女が、水鏡に映っている。どうやら何かを追跡しているらしい。
少しだけ、視点を引いた。華奢な手足を必死に動かし、「そこのお前、止まりなさい」などと言っているようだ。そんなこと言って、止まる相手なんているんだろうか?
——見たところ、彼女は銃を持っているらしく。彼女の後方へと視点を動かし、僕は食い入るように彼女の背と——彼女が追いかけているものを見た。
金髪の男が、どうやら路地へと追い詰められたようだ。少女が容赦なく発砲し、被弾した男は血の一滴も流さないまま、ざらりと赤い砂になって崩れた。
……彼女の表情は晴れない。しかしそれは、どちらかというと憐憫というより、少女自体に元気がないらしい。
おぼつかない足取りで、砂の山へと歩み寄り。しゃがみ込んで何か、腰のポーチを開いているようだが——と。
そこで彼女が、慌てたようにこちらを向いた。
「おっ、と……?」
赤い瞳が印象的な、鋭い印象の美少女だ。だが「こちら」を見ているわけではなく、背後に気配を感じたのだろう。何もないことを確認したのか、すぐにまた、砂を集めようとしゃがみ込んだ。
かわいいなあ、と頬が緩む。一瞬とはいえ怯えきった表情がたまらない。それでいて自分の行動には迷いがないのだ、殺されるかもしれないから控えようとか思わない矛盾もまた愛しい。
そして僕は、意を決して立ち上がった。己がストーカー気質なのは理解しているが、別にそれ関連で向かうわけではない。
じゃあなぜって、そりゃあ彼女の頭を狙う、銃口の存在を見つけてしまったので。