「どこから、来た」
「そりゃあ下の階から、チュンッとワープしてきたんだよ。それで君は……ジェイドっていうんだね。これが人間の言う名札かあ、便利だね」
先ほどまでの弱りきったそれとは、全く違う張りのある声。血がついていた髪はもう、今では真っ白に戻っていて——魔術師のローブを思わせる服もまた、赤い染みなど残っていない。
ほんの少しの間、呆然としていた。けれどやりすぎなほどに人ではないその言動以前に、そもそもあれだけ血を流しておいて、平然と立っている時点で判断するべきだった、と。
構えた銃は、しかし「やめておいた方がいいよ」と片手で奪われた。
「銃っていうのは恐ろしい武器だよね。人の中で暮らし、平和に慣れた神たちなら……あっさり殺されてしまうのも頷ける。ただ既に、その銃弾を脅威と認識した上でさ、目の前にいる君たちの首を折れないほど僕は弱くない」
放り投げられた銃が、空中でかき消える。ぞ、と背筋に走ったものは、確かに恐怖の冷たさだった。冷酷に光る青い瞳に、射抜かれてただ動けなくなる。
「……なるほど、お前が『巻き込まれた怪我人』か。人間のふりをして侵入してきたからには、何か目的があるんだな」
「ああうん、でもタダでとは言わないさ。加えてできる限り、君の意思や意図も尊重する気ではいるよ。
さて、それじゃあ自己紹介といこうか。僕はサイラス、ちょっと長生きの神様だ。ただほとんど引きこもってたから、おそらくどこにも記録がないだろうけど。
三つ、用事ができたんだ。それら全てを叶えたら、即座に殺されてあげるから……この組織の隊員として、彼女と一緒に行動させてくれない?」
——しばし室内に、沈黙が落ちた。