——「願い主」。それは私の前にいる、「神」という存在と根深い関係にある人間だ。
いつか聞いた話によれば、神とは強い願いを持つ人間の前に現れ、その願いを叶えるために力を貸してくれるもので——神が現れる原因となった、願いを持つ人間を願い主と呼ぶらしい。今この男はそれが私だと、そう言ってのけたわけだ。
願いの数だけ神はいる。なんなら願いに共鳴し、己は姿を得たのだと語る神もいた。だがその性質上、神というものはあまりにも人間に甘い。
「どうしたんだい、顔色が悪いよ」
だからこそ——神とは狩られるべきなのだ。自らの願い主を優先するとはいえ、人間というものが発生理由である以上願いを持つ者には優しい。となれば邪な理由から神に擦り寄り、力を借りて悪事を働いてしまう者も少なからずいたわけで。
世界が沈む前からそうだった。「正しい」人間が神の力で得た利益よりも、「間違った」人間が神の力で壊してしまったものの方が、明らかに大きいと言えるほどには。
ふわりと笑い、私を案ずるその姿は、見る人からすればまさに神の微笑だ。けれどその実、こいつらは人間的な価値観を持たず、そのくせ人間を深く愛してくれやがっている爆弾のスイッチだ。