気だるいままに家を出て、サイラスを連れて組織への道を歩く。あまり人間界に馴染みがないと語ったサイラスは、さも楽しそうに辺りを見回していた。
「おお、ビルにでっかいモニターがついてる! あっちのお店見てきていいかい、ほら、あれだよあれ!」
袖を引くな、幼児か。しかしまあ、先ほどあれだけ突き放したのにこれか……懲りないというより、学習能力がないのかと疑うレベルである。
「ド田舎から、都会に出てきたばっかりの人みたいなリアクションしますね……」
結局「自分で買うから!」と押し切られて、彼が買った独創的なオブジェ、しかも巨大なものを十個以上、をほくほく顔で謎空間に放り込むのを眺める。どこに入れてるんだろうとは考えない、だってこいつはファンタジーの塊だからだ。
「まああながち、その表現も間違いじゃないかも。自分の力でなんとかできる以上、こういう発達した文明って僕たちにはいらないからさ」
だが向けた皮肉は、思ったよりも真面目な顔で返されてしまった。ああもうとにかく調子が狂う、どうして嫌な顔ひとつしないんだ。
……とはいえ確かに、科学の力でもなんとかできない願いがあるからこそ……今までずっと、彼らの存在がもてはやされていたわけだし。どちらにせよ彼らのいる世界は、私たちの想像を軽く超えてくるのだろう。
「けど、消費する電気の量すごそうだねこれ。どっかにでっかい発電所とかあるのかい?」
「確か第四と第五階層は、生産と工業のために色々あった気もしますが……そこまで大きな発電所はなかった気がします。よく賄えてるなこれ……」
「ふぅん……? でもなんで、第四と第五階層なんだい? もっと上の方に固めても良かったと思うんだけど」
「それについては……色々と、面倒な理由がありまして」