アダムはいなかった 「崇拝」1

 気だるいままに家を出て、サイラスを連れて組織への道を歩く。あまり人間界に馴染みがないと語ったサイラスは、さも楽しそうに辺りを見回していた。

「おお、ビルにでっかいモニターがついてる! あっちのお店見てきていいかい、ほら、あれだよあれ!」

 袖を引くな、幼児か。しかしまあ、先ほどあれだけ突き放したのにこれか……懲りないというより、学習能力がないのかと疑うレベルである。

「ド田舎から、都会に出てきたばっかりの人みたいなリアクションしますね……」

 結局「自分で買うから!」と押し切られて、彼が買った独創的なオブジェ、しかも巨大なものを十個以上、をほくほく顔で謎空間に放り込むのを眺める。どこに入れてるんだろうとは考えない、だってこいつはファンタジーの塊だからだ。

「まああながち、その表現も間違いじゃないかも。自分の力でなんとかできる以上、こういう発達した文明って僕たちにはいらないからさ」

 だが向けた皮肉は、思ったよりも真面目な顔で返されてしまった。ああもうとにかく調子が狂う、どうして嫌な顔ひとつしないんだ。

 ……とはいえ確かに、科学の力でもなんとかできない願いがあるからこそ……今までずっと、彼らの存在がもてはやされていたわけだし。どちらにせよ彼らのいる世界は、私たちの想像を軽く超えてくるのだろう。

「けど、消費する電気の量すごそうだねこれ。どっかにでっかい発電所とかあるのかい?」

「確か第四と第五階層は、生産と工業のために色々あった気もしますが……そこまで大きな発電所はなかった気がします。よく賄えてるなこれ……」

「ふぅん……? でもなんで、第四と第五階層なんだい? もっと上の方に固めても良かったと思うんだけど」

「それについては……色々と、面倒な理由がありまして」

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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