「……ジェイド様は、本当に素晴らしいお方だ……」
「あの若さでこのような人格者なんだ、邪悪な神に対して感謝などと!」
「あと美人! 毎日でも放送して!」
……最後は信仰のニュアンスが違ったような気もするが、ともあれ。周りの反応を見るにやはり、私は彼らと同じになれそうもない。
「……ある意味では、みんなジェイドが心の拠り所なんだろうね。だから彼に陶酔することによって、目の前の不安を忘れようとしている……」
「実際、『太陽』も方舟も、全てジェイドの力であると思ってる人も多いので。よく考えたらおかしいんですけどね、考えたくないんだろうなあ」
別にそれが、悪いことだとは思わない。逃避や盲目の信仰により、もう二度と「外」に出られないかもしれない不安から……目をそらし、流れに身を任せなければ生きていけない人もいる。
それでもたまに、考えてしまう。絶対であり、永遠であると無意識に信じたものが崩れるのは一瞬だ。私はそれを、もう何度も体験してきた上に——そういう生きるための現実逃避よりは、死んで全てを終えたいと思ってしまう人間だ。だからあまり、分かり合えないなとも思う。
『……で、あるが故に……私はいずれ、太陽を取り戻します。そのために私は、今ここにいるのですから!』
わ、と上がった歓声の中、この光景が見えているらしい彼は満足そうに両手を広げ、私たちに目もくれず放送を終了した。
「……皮肉ですよね。嫌い、殺して回っているはずのそれと同一視されるなんて」
「仕方ないね、彼自身がそういう道を選んだんだ。実際それで、救われている人も山ほどいるんだから尚更ね」
不遜な私たちの会話は、続く歓声にかき消されて響くことはなく。あるいは私も、こうやって何かに傾倒できていたなら。もう少し楽に生きられたのかな、とありもしない可能性を想った。