アダムはいなかった 「過去」2

「そういえば……希空、そろそろあなたがうちに来て一年になるね。何か欲しいものはある?」

 腕の中の私を撫でながら、微笑むイヴに「はーい!」と手を挙げる。危ないよ、と笑いながらその手を取るジェイドに、私は鼻息も荒く告げた。

「きょうだいがほしい!」

「……そっか。ジェイドはどう思う?」

「お、俺に訊くのか……まあ、イヴさえよければ……俺も、家族が増えたら嬉しいとは、思う」

「ほんと? じゃあやくそくね、ぜったいだよ!」

「ふふ、でもすぐには無理かなあ。だから今日は、希空にこれをあげる」

 言葉と共に、ころん、と掌に角砂糖にも似たものが転がる。食べちゃだめだよ、と笑いながら、イヴは私の掌ごとそれを包んで。

 あたたかくて、優しい光がイヴの手からあふれる。それが私の手に吸い込まれて、ほわりと全身に広がっていった。

「これはね、今日から希空のもの。あなたの好きなように使っていいよ、秘密基地にしてもいいし……友達をたくさん招待するのもいい。
 だからどうか、大切にしてね。絶対に、あなたのためになるものだから」

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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