アダムはいなかった 「不死」3

『はあよかった、思いとどまってくれてどーも。少しは落ち着いたか?』

「……誰ですか」

『いやオレのこと殺しといて随分薄情だなあオイ……あと、オレの声は口がない以上音じゃねえから、現状お前にしか聞こえてない。だからお前も頭の中で話せ、不審者度マックスだぞ今』

(つまり、こういうことですか)

『そうそう。これで安心して話せるな、あと不便だからオレに名前付けてくれよ』

 あくまで快活に、そして優しく響く声は、私への敵意など微塵も感じられない。やっぱり都合のいい幻聴では、と現実逃避しかけた私に、『ちげーから! これはちゃんとオレの意思だから!』と即ツッコミが飛んだ。

『……ほら、お前がアダム様と出会う直前、お前に殺された神だよオレは。アダム様も言ってただろ、神の亡骸には力と意思が残ってるって』

(じゃあなんで、そんなに普通に接してくれるんですか)

 言いながらも、サイラスが「アダム様」と呼ばれていることに追撃のような落胆を覚えた。ああやはり、彼の言っていたことは事実なのか……

『ああもうそれ、それだよ。殺されて以降、ずっとお前の様子を見聞きしてたけどさ。お前のそのマイナス思考イライラするんだよな、オレのこと殺したくせに死にたがってるし』

(……ごめん、なさい)

『でも……いやだからこそ、か。なんでだろうなあ、昨日からずっと泣いてるお前の声、あんまりにも悲痛で……今まで本当に、しんどかったんだろうなって分かっちまって。怒るに怒れなくなったから、こうして声かけたんだよ』

(とは、いいましても)

『まあ信用ならねえよな、オレも罠だと思うよ普通。けどさ、聞いてくれよ。
 ……オレの願い主は、病弱で小さい女の子でさ。家族は全然見舞いにも来ない奴らだったから、オレのことをお兄ちゃんお兄ちゃんって、ずっと慕ってくれてたんだが……つい最近、死んじまったんだよ』

 

 ——「……こっちだって、死人が出たばかりで忙しいのにな。家族も見舞いに来ないような、小さい女の子だったんだ……」

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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