は?
『うわ失礼だな、は? じゃねえだろは? じゃ!』
(言ったそばから! 今聞かないようにするって言ったのアレクじゃん!)
『今思いっきり顔に出てたからな! むしろそれ以外の感情絶対なかったろお前!』
うーんバレている。だが事実だから仕方ないだろう。だって瓶入りの砂に、「今日から妹にしてやる」と言われるシチュエーション、あまりにも特殊。
『まあ、嫌なら無理にとは言わねえが。ともあれオレは——』
(いや……アレクさえいいならぜひ。でも恥ずかしいから、お兄ちゃんとは呼ばないからね)
——もしもまだ、アレクに肉体があったとしたら、凄まじい勢いで二度見されていたと思う。
『お、おう……しかしいいのか? 言い出したのはオレだが……神だぜ、これでも』
(昔から、きょうだいってものに憧れてたから。結局叶わないままだったし、アレクのことは信頼できるって判断した。だから大分……嬉しいよ)
……そうか、と。なんだか感慨深げなアレクの声に、思わず瓶を撫でていた。
『おいこら撫でんな。ともあれ今は家帰るぞ、アダム様にはいったん、オレが話つけといてやるから』
(……うん)
なんとも頼もしい兄さんだ。彼入りの瓶を大事に抱え、私は家への道を戻り始めた。
『しかしまあ、アダム様も随分……お前のことが大事なんだな』
(な、んでそうなるの……私に色々嘘ついた上で、あんなことしたくせに)
『……言ったろ、アダム様には元々感情なんかなかったんだ。例えそれらしく振る舞ってるだけだとしても、そんなの昔じゃ考えられなかったことだ。それだけお前に、異質だと思われて避けられたくなかったんだろうよ』
(違うと思うけどなあ。目的を果たすために不審がられないようにするのって、基本中の基本じゃない?)
『まあ、そうとも言えるけどなあ。そもそも当初の目的に……いや、まあいいか。それはオレから言うべきことじゃないな、陰から応援してるぜ』
何をだ。けれどなんとか、涙は引いて声も戻りかけているから——アレクの存在は本当にありがたいものだった。あのまま一人でいれば発狂していた自信がある、感謝しなければ、と。
お礼の言葉を考えかけて、うまく言葉にできずに止める。おそらくもう、彼が元の姿に戻れることはないのだろうが……できるだけ長く、一緒にいられればいいなと思った。