翌日。身支度を終え、私がリビングに顔を出した時にはもう、時計の針は十五時を指していた。
「……おはよう。気分はどうだい」
「あまり、よくはないですが……すみません、昨日は。取り乱しました」
「いいよ、気にしないで。
……本当に、落ち着いてくれてよかった。こっちにおいで、希空」
言われるがままに彼の隣、ソファへと座れば『……おはよう』とやや気まずげな声がする。アレクだった。
「おはようアレク。ちゃんと瓶に戻ってる……詰め替えてくれたんですね。ありがとうございます」
「ふふん、僕クラスになるとこんなの一瞬だよ。各種書類も揃ったし、とりあえずアレクも無事だし……希空が元気になってくれれば、情報収集ミッションはコンプリートだ。
よく頑張ったね、僕も眠くなきゃそばにいたんだけど……ごめんね」
大丈夫ですよ、と言いかけて、ふと目をやったサイラスの右手には、なぜか包帯が巻かれている。どうしたんですかこれ、と彼の手を取れば、「あ、あわわ」と裏返った声が飛んだ。
「の、希空が初めて自分から僕に……!」
「そういうのいいですから……というか私だって、私のせいで負った怪我なら心配します。
……でももしかして、昨日の傷が治ってないんですか……?」
『オレもその辺り、色々聞き出そうとしたんだが……何も話してくれなくてな。大丈夫だ大丈夫だって、言う割にずっと顔色も悪いし』
「む、僕は元から色白だから大丈夫だってば。包帯だって、一度人間の気持ちを体感してみたくて……」
「血が滲んでますけど」
あ、目をそらした。しかも下手くそな口笛付きである。
「と、ともあれ君が昨日、頑張って回収してきた書類について話し合おう。君の意見を聞きたいんだ」
「サイラスがそれでいいなら、追求はしませんが……資料はどこに?」
「ここだよ。さて、それじゃあまずは銃の持ち出し記録だ」
言って、テーブルに広げられたそれは昨日と同じ情報が書いてあるばかりで。「あれからアレクとも、少し話したんだけど」とサイラスは続けた。