「これに関しては、書かれている数が正確かどうかを確認する術がない。加えて、細かい管理は上層部がしているって話だし……もしも上層部の人間が犯人だった場合、記録を改竄されている可能性もあるからね。鵜呑みにすることだけはしないように」
アレクと共に「はーい」と返事をして、次の書類に目を通す。これは昨日、私がなんとか回収してきた採血記録だ。
「これもまあ、見事に君しか書かれてない、と」
「そうですね……大丈夫かなこの組織……」
『オレはダメだと思うなあ……』
「で、この階層転移記録も」
「調べたところ、生産職の方は全員アリバイがありましたし……私しかいない、ですね」
『……明らかに改竄だろ、って思うオレと、働いてるのお前だけなんじゃねえのって思うオレが殴り合ってる』
「そうだねえ……希空は多分、ちょっと働きすぎだと思うよ……」
うるさい。しかしどちらにせよ、大変な思いをした割に……得られた情報は大したことなかったなあ……
『だがまあ、書類は一応取っておこうぜ。これだけ頑張って回収したわけだしさ』
「そうだね、僕の方で保管しておくよ。
……あ、そうだ。そういえばなんだけど、ちょっとグロテスクなことしていい?」
「そんな、今日の晩御飯カレーでもいい? みたいなノリで訊かれても……自分で自分をグロテスクにするなら、掃除込みでどうぞですけど」
『希空もアダム様のノリに対して、結構順応してきたよなあ……』
しみじみ呟くアレクは無視するとして、まあサイラスのことだから大袈裟に言っているのだろう、という確信はある。「今から自分の腹に手を突っ込んで、引っ掻き回そうと思う!」みたいなことでさえ言われなければ、別に構わないが果たして……
「えっとね、今から自分の腹に手を突っ込んで、探し物をしようと思うんだけど……絵面がひどいだろうから、そこ大丈夫かなって。ちなみに血を見るようなことはないよ、安心安全だね」
どこがだ。というか半分以上当たってる辺り嫌すぎる、私が本当に順応してきたみたいじゃないか……
『……希空が頭抱えてるので代わりに訊きますけど、いったいなんのために……?』
「いや、希空を撃とうとした犯人……もしかしたら特定できるかも、と思って」
「えっ、どうやってですか?」
「ふふん、こちとら伊達に人外やってないからね。君を庇って撃たれた時の銃弾、実はまだ体内にあるんだ。
で、僕が使える力の中に、事件に関係した物があれば……というか、事件の時近くにあった物があれば、その物が『見た』様子を立体的に再現できる、っていうのがあってさ。録画すれば動画ファイルにもできるよ、そしたらあのでっかいモニターで流すこともできちゃうわけだ」