アダムはいなかった 「痕跡」3

『……希空がまた頭抱えてますけど』

 なんだかもう、こいつら本当に私の理解の範疇超えてるんだなあ……と遠い目にならざるを得ない。ツッコミどころしかないせいで、逆にどこから反応すればいいのかも分からないってどんなだよ。

「え、ダメ? 君が嫌ならしないけど」

「じ、銃撃の被害者が増えたらまずいですし……ぜひ……」

「分かった。じゃあちょっと離れててね」

 私がアレクを手に、ソファから数歩離れたのを確認し——サイラスの右手が光り輝いたかと思えば、なんの躊躇いもなく腹に手を突っ込んだ。

「わ、わあすごい」

 そしてしばらく、「うーんどこかなー」とか「これか! あっ違う」とか言っていたのが、唐突に手を引き抜くものだからびくり、と肩が跳ねた。終わるならそう言え。

「あったよ、これが撃ち込まれたやつで——」

 しかし。

 彼が握っていた手を開いた瞬間、確かに見えたはずの銃弾は——音も煙も立てぬまま、ほろりと崩れて消滅してしまった。

「……え、っと。体内で分解してたとかそういう……?」

「いや……違う。なるほど、そういうやり口でくるかあ……」

「何がですか?」

「……事実改変だ。今この瞬間、僕が撃たれたって事実ごと……この銃弾の存在が、抹消されたらしい」

「事実、改変……」

 少しの思考を挟み、あ、と声が漏れた。頭に残る違和感が、明確な名前を得て形になる。そうだ、昨日の資料室で感じたあれは……!

「おや、覚えがあるのかい? どんな内容でもいい、その時感じた違和感について……僕に話してくれないか」

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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