『……希空がまた頭抱えてますけど』
なんだかもう、こいつら本当に私の理解の範疇超えてるんだなあ……と遠い目にならざるを得ない。ツッコミどころしかないせいで、逆にどこから反応すればいいのかも分からないってどんなだよ。
「え、ダメ? 君が嫌ならしないけど」
「じ、銃撃の被害者が増えたらまずいですし……ぜひ……」
「分かった。じゃあちょっと離れててね」
私がアレクを手に、ソファから数歩離れたのを確認し——サイラスの右手が光り輝いたかと思えば、なんの躊躇いもなく腹に手を突っ込んだ。
「わ、わあすごい」
そしてしばらく、「うーんどこかなー」とか「これか! あっ違う」とか言っていたのが、唐突に手を引き抜くものだからびくり、と肩が跳ねた。終わるならそう言え。
「あったよ、これが撃ち込まれたやつで——」
しかし。
彼が握っていた手を開いた瞬間、確かに見えたはずの銃弾は——音も煙も立てぬまま、ほろりと崩れて消滅してしまった。
「……え、っと。体内で分解してたとかそういう……?」
「いや……違う。なるほど、そういうやり口でくるかあ……」
「何がですか?」
「……事実改変だ。今この瞬間、僕が撃たれたって事実ごと……この銃弾の存在が、抹消されたらしい」
「事実、改変……」
少しの思考を挟み、あ、と声が漏れた。頭に残る違和感が、明確な名前を得て形になる。そうだ、昨日の資料室で感じたあれは……!
「おや、覚えがあるのかい? どんな内容でもいい、その時感じた違和感について……僕に話してくれないか」