「……まあ、ショックといえばショックですが。なんとなく、そんな気はしていました」
「そっか。よかった、これで『悲しすぎてもう動けません』とか言われたら、ジェイドが変死体で発見されてたかもしれない」
う、目が笑ってないぞサイラス……お前が言うと冗談に聞こえない。
『ですがアダム様、そうなるとこちらに打つ手はない、ということになるのでは……』
「まあ、銃撃事件に関してはそうだろうね。今の僕たちにできることはないよ、残念なことにね」
「でもよかった、そうなれば私以外は狙われないでしょうし……とりあえず解決ですね」
「なーに言ってるんだ君は。あいつは義理の娘すら殺そうとする男だよ? 他に狙われてる人がいたとしても、全くもっておかしくないし……君自身、不死性が周りにバレたとしたらどうなると思う?」
「そりゃあ、死ぬまで追いかけ回されるかモルモットか……ですけど、サイラスが力を回収してくれればいいだけでは……」
「ダメ! そうしたら君、いつ死のうとするか分かったもんじゃない!」
今度は私の信用がゼロだ。だってずっと死にたかったんです、なんて言ったところで逆効果なのは、火を見るよりも明らかだった。
『では何か、策がおありなのですか?』
「うん。もちろんだよ、そうじゃなきゃこんなこと言ってない。
その前にひとつ確認だ。希空、君はジェイドの悪行をもし暴けるとしたら……彼に、どうなってほしい?」
音になり損ねた衝動が、私の喉をほんの微かに揺らした。
「……うまく、言葉にはできないんですが。強いて言うなら……反省は、してほしい……です」
「そっか、分かったよ。それじゃあやっぱり、彼には失脚してもらうしかないね。
……それと、ねえ希空。僕からしたらジェイドって極悪人なんだけど、僕がそう思ってる理由ってなんだと思う?」
「なんでそれ、私に訊くんですか……イヴを殺したから?」
「んー、それもだけど違うかな。惜しい!」
「え、じゃあ私を撃ったこと……?」
「それももちろんそうだけど、僕が言いたいのはそれじゃないかな」
な、なんなんだまどろっこしい。だがサイラスの表情は真剣そのもので、とてもふざけているようには見えない。
……なんだろう。でも他に、「極悪人」とまで言わせるような悪行なんて思い浮かばない……
「悩んでる悩んでる。でもちょっと複雑だなあ、君はそれを悪と認識できてないのか。
……じゃあヒント。君は今、どうして死にたがってるんだい」
「そ、れは……色々、ありすぎて」
「あー、まあそうか。そんじゃ一番大きい理由をおくれ。それがさっきの質問の答えだ」
私が死にたいと思う、一番大きい理由。そんなの決まっているだろう、ジェイドに与えられ続けた精神的苦痛が……ああ、なるほど。
「……彼が私を、ずっと虐待していたからですか」