アダムはいなかった 「笑顔」2

 ……壁にかかったカレンダーに目をやる。ジェイドに指定されたタイムリミットまで、あと三日しか残っていない。

 おそらく私には聞こえないように、何かを話し始めた二人をじっと見つめる。今でこそこうして、私のそばで笑っているけれど——何もしないままでいればきっと、瞬きの間にいなくなってしまう彼ら。

 一人のリビングを思い出す。慣れっこだったはずだった。けれどもう、こうして知ってしまった以上……また一人に戻るのは、嫌だと思っている。

 ならば動くべきだろう、後悔するなとアレクは言った。協力すると、サイラスも言ってくれた。

「ふふふ、下手したら変死体になるよりもきつい現実がジェイドを待ってるかもしれないね。そっちの方がよほど興味ある!」

「だから物騒なんですよ発想が」

『ダメですよアダム様、変死体よりは心臓発作に見せかけた方がよほど自然です! ジェイド様働き者だったから……とか言われて、きっと怪しまれずに済みます』

「アレクも変なこと吹き込まないでね!」

 ……ああもう、本当にこの神様たちは。私を心配してくれているからこその言動なのだろうが、もうちょっと穏便に済ませられないのか。

「……まったく、そういうところですよ二人とも」

 ふふ、と漏れる息と共に、サイラスを見やれば——唐突に、やいのやいの言っていた二人が押し黙った。

「……わらっ……」

『てる……!』

 は?

「ちょ、一瞬すぎるよ希空! もう真顔だし!」

『で、でもオレ見ましたよ、希空の笑顔なんて初めて見た……!』

 失礼な。私だって笑う時は笑うんですけど。

「……でも、そうだね。こんなに可愛い笑顔を見せられてしまったら、僕たちも頑張るしかないね」

『そうですねえ、少なくとも事件解決はしっかり見届けるつもりですよオレは』

「頼もしいね、僕も負けていられないな……!」

 理由はどうあれ、やる気に満ち溢れてくれたようなのでいいか。ならば私もと意気込んで——

『で、具体的には何をすればいいんですか?』

「決まってないよ! 今から考える!」

 ……やっぱりどこか抜けているのが、私たちらしいと言えばらしいのかもしれなかった。

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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