幼い私が、頭を庇いながら泣いている。
ゆるして父さん、と口にするたび、罵声とビール飲料の缶が飛び——正直見ていられなかったので、その辺りだけ確認してサイラスに任せた。
ざっと見た限り、映像は食器棚の中からである分やや遠いが、それが逆にリアリティーを醸し出している……というか。実際本当にあったことではあるものの、信じてもらえるかはサイラスの編集力にも影響されるだろう。
『……希空、大丈夫か?』
そして待機組である私とアレクは、リビングでぼんやりと虚空を眺めていた。私が思い出したように口元を押さえるのを、やりすぎなくらいに心配してくれる辺り本当に兄気質だ。
「ああうん、大分マシになった。案外トラウマだったんだね、だから忘れてたっていうのもあるか……」
『そんなの忘れてた方がいい。だが確実に、お前に傷が残ってる以上……ジェイドのやったことは消えねえよ。だから今、アダム様もなんとかしようとしてるわけだし』
一人部屋にこもり、作業を続けるサイラスを待つ。ただそれだけのことだが、どうにもそわそわしてしまって落ち着かない。こうしている間にも何か、できることがあるのではないかと席を立ちかけた私に、『いいから休んでろ』とアレクが苦笑する。
『アダム様は何させてもすごいんだ。とはいえそろそろ、戻ってくると思うんだが……』
「よーし二人ともお待たせ! 君のパソコンすごいね、けど僕の頭より考えるのが遅い!」
戻ってくるなりマウントを取るな、相手は無機物だぞ……
『お疲れ様です、アダム様。書き出しまで完了しましたか?』
「うん。とりあえずモニターに映しやすいサイズにトリミングして、色味をがっつりいじらないと分からないように、僕がピースしてる透かし入れて……あと色々やったよ。これで無意識下とはいえ、みんな僕を認識するから映像自体の改変対策もばっちり!」
『なるほど……? ともあれこれで、動画ファイルは完成ですね。あとはどうやって、組織のモニターに映すかですが』
「そうだね。でも今日はいったん休もう、詳しいことは明日。コンディションを万全にしておくのも作戦のうちだよ。
——というわけで、今日は解散! 明日の早起きに備えようね!」