「……眠れない……」
サイラスとアレクに「今日くらいはリラックスして寝てくれ」などと頼み込まれ、久々に取り出したパジャマを着て横になったが……いつもと違う、というだけで全く落ち着かない。もちろんそれだけが原因ではない、というよりメインは明日への緊張であることは理解しているが。
サイラスには間違っても部屋に来るなとは言っているし、アレクは動画のチェック作業も兼ねてサイラスの部屋にいる。つまりは久々に訪れた一人の時間なのだ、実際耳と脳を休めるいい機会だった。
……目を閉じる。寂しいとは思わない、というか必要以上にベタベタされるのはむしろ苦手だ。故にとても、心安らぐ時間であるが——
昼間、二人に言ったことを思い出す。もちろん後悔はしていない。実際彼らと一緒なら、やり遂げられるだろうという確信はある。
……それでもどこか、胸の奥で黒いものが燻っている。お前にできるのかと。お前のミスひとつで、全てが崩れる可能性だって大いにあるだろうに、と。
「気持ち、悪い……」
ストレスのあまり、頭を抱えてベッドの上で震えるだけの夜もあった。ある意味ではそれと似た、潰れそうなほどの不安に苛まれている。
ベッドの上で丸くなる。重く息を吐いた。どうしよう、このままでは眠れそうにない……
「……ねえ、希空。もしかしなくても起きてるでしょ。ドアは開けないからさ、ちょっと話さないかい」
跳ね起きる。ほかでもないサイラスの声だ。
「な、んで分かったんですか」
「そりゃあねー、根深いトラウマ掘り起こされた日に安眠できる人なんかいないだろう?
こっちは動画のチェックとかも終わって、アレクを休ませてきたからさ。少しの間、ここに失礼するよ」
よいしょ、とサイラスがドアに寄りかかる気配。どうやら床に座ったらしい。
「……怖いかい」
「そりゃあ……怖くないわけ、ないです」
「だろうね。実のところ僕もね、ちょっと怖いんだ」
「……そう、なんですか?」
意外だった。いつもあんなに自信たっぷりのサイラスが、そのようなことを言うなんて。