「まずい、希空!」
「分かってます!」
叫び、慌ててスタジオへと駆け込む。客人はものの見事に、眉間を撃ち抜かれていた。
「……だめだ、死んでる」
「なに、してるんですかジェイド! 方舟の人口を無駄に減らすなって、いつかそう言ったのはあなたでしょう!」
「……俺は、間違っていない。イヴを愚弄したこいつが悪い」
言う彼の手には、未だ煙を上げる銃が握られたままで。その先端がこちらを向いていると、理解した時にはもう遅かった。
「——希空ッ!」
もう一度、銃声。突き飛ばすようにして私を庇ったサイラスは、左肩に手痛い一撃を受けていた。
「『その銃、もう使えないよ』!」
だが朗々と響いた、彼の宣言に従い——バキ、と銃が真っ二つになった。
「……いてて……まったく、上層部を疑ってはいたけど、まさか最高権力者が黒幕とはね……
君にとっては大事なことなんだろうけど、それで人を殺していいのなら誰も、この世には生きてられないよっと……!」
……サイラスの傷の塞がりが、やはり明らかに遅く痛々しい。眉をひそめて肩を押さえ、立ち上がった彼に向けられる目は空虚なものだった。
「いや、違う。この男は死んでいない」
嘘だ。今頃番組スタッフも、それを観ている者も皆大混乱だろうに。こちらが何かするまでもなかったのか……?
「そうだぞ、きちんと罪を償うべきだ。もちろん希空に与えた精神的な苦痛の分まで!」
「違う。本当のことだ、なあイヴ。お前もそう思うだろう?」
……狂って、しまったのか。返す言葉も浮かばないまま、眉をひそめる私たちの背後——しかし「その声」は唐突に響いた。
「……しまった、少し寝ていたようですな! 全くもって歳は取りたくないもので……おや、ジェイド様。この方々は?」
「俺を襲撃しに来た族だ、銃だって持っている。そうだろう?」
「な、ッ! なんで僕、銃なんか持って……!」
見れば言葉通り、先ほどまでジェイドの手の中にあったはずの折れた銃を「サイラスが持っている」。慌てて振り返れば、番組スタッフと客人がぎこちない動きで走り去るところだった。