「……それで、どうするんですかサイラス。生きるか生きないかだけはっきりしてください、そうじゃないと困ります」
黙秘を貫くつもりらしいジェイドの服とハンカチで、止血と共に彼を拘束し。とりあえず動けないようにしてから、問えばサイラスは困ったように、笑う。
「……なんで、そこまでしてくれるんだい……」
「そりゃあ、ひとりで生きたくないからですよ。あなたもきっと、そうですよね」
「それは……そう、だけどさ」
何を迷うことがあるのだろう。まだ何か、気になる点でもあるのだろうか。
「……もう、手遅れだよ。最初に言っただろう……僕が提示した、『用事』はなんだったか……忘れたとは、言わせないよ」
分かっている。「私の力になりたい」は今まで、何度もそうしてくれただろう。「太陽や方舟のことを知りたい」もまた、私が彼に知識を与えたからこそもう遅い。そして最後に……「誰かに必要とされてみたい」。
「君は優しくて、賢い子だ。明言すれば僕が死ぬって、理解してるんだろう?」
「……なんでそれ、私に言っちゃうんですか」
「そりゃあ……君のことが可愛くて、愛おしくて仕方ないからだよ」
それならどうして、とは言えない。だってずっと、彼は一人だった。
二千年の孤独に、思いを馳せる。果てのない闇の中、いつ現れるかも分からない私を待つ彼。どういう意味であれ、気に入った相手だっていただろう。
けれど、彼ら彼女らはきっと死んだ。深入りすればするほど、愛した者の喪失は——己の一部が欠けるような痛みを伴う。
……本当は、私だって分かっている。
彼が欲しいのは、一時のそれではなく永遠の幸福だ。そして人である私は、きっと彼を置いて死ぬだろう。不老不死にしてくれだなんて言えない、言いたくないと私が思っている時点で……説得は、不可能だろうと理解、しているのだ。
彼からすれば、なんと残酷なことだろう。瞬きの間しか一緒にいてくれないくせに、私のために生きてくれなどと言うのだ。そんなの絶対、聞き入れたくないと私でも思う。
妥協は互いに、できそうもなかった。だが今ここで、死なれるわけにはいかない。
……どうしたものだろう。そんな考え方すら既に、それこそ不誠実の極みだった。だって私は、自分に都合のいい状態で……彼に生きて欲しいと、まだ思っているのだから。
「……サイラス、私は——」