目を開ける。どうやらまた、何か温かなものに包まれているらしい。
「おはよう、希空。大方治したと思うけど……どこか、つらいところはないかい」
優しい声だ。聞いていてひどく安心できる。無意識のうちにすり寄って、「うん」と返せば頬を撫でられた。
……誰だっけ、このひと。
数度目を瞬いた。輪郭が戻ってくる。ああ、なんだサイラスか。そんなに強く抱きしめなくたって、私はどこにも行かないのにな、と。
そこまできてようやく、意識が一瞬で覚醒した。
「ちょっ……何、してるんですか。苦しいです」
「ああ、よかったいつもの希空だ! 記憶とか飛んでたらどうしようかと思った……!」
だから余計に力を込めるな、苦しいって言ってるだろ!
「……そうか。起きた、のか」
そしてサイラスからなんとか逃れ、声のした方に目をやれば。項垂れたジェイドと、ちょうど女性ほどの大きさをした——おそらくはイヴだったらしい、透明なものが落ちている。
……目をそらした。見ていてあまり、気分のいいものではない。
「起きたらダメなのかい? 言っておくけどね、イヴをこんなことにしたのは君だよ」
サイラスが私を庇うように、今度は力を入れず抱きついてくる。
「そして希空が死ななかったのは、君が殺させていた最後の神のおかげだ。いい加減、認めた方が楽だと思うけどね」
やはり、ジェイドは何も答えない。イヴが機能を停止したせいか、薄暗いままの太陽の間にしばし、重い沈黙が落ちた。