アダムはいなかった 「再生」1

 目を開ける。どうやらまた、何か温かなものに包まれているらしい。

「おはよう、希空。大方治したと思うけど……どこか、つらいところはないかい」

 優しい声だ。聞いていてひどく安心できる。無意識のうちにすり寄って、「うん」と返せば頬を撫でられた。

 ……誰だっけ、このひと。

 数度目を瞬いた。輪郭が戻ってくる。ああ、なんだサイラスか。そんなに強く抱きしめなくたって、私はどこにも行かないのにな、と。

 そこまできてようやく、意識が一瞬で覚醒した。

「ちょっ……何、してるんですか。苦しいです」

「ああ、よかったいつもの希空だ! 記憶とか飛んでたらどうしようかと思った……!」

 だから余計に力を込めるな、苦しいって言ってるだろ!

「……そうか。起きた、のか」

 そしてサイラスからなんとか逃れ、声のした方に目をやれば。項垂れたジェイドと、ちょうど女性ほどの大きさをした——おそらくはイヴだったらしい、透明なものが落ちている。

 ……目をそらした。見ていてあまり、気分のいいものではない。

「起きたらダメなのかい? 言っておくけどね、イヴをこんなことにしたのは君だよ」

 サイラスが私を庇うように、今度は力を入れず抱きついてくる。

「そして希空が死ななかったのは、君が殺させていた最後の神のおかげだ。いい加減、認めた方が楽だと思うけどね」

 やはり、ジェイドは何も答えない。イヴが機能を停止したせいか、薄暗いままの太陽の間にしばし、重い沈黙が落ちた。

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静海

小説を書くこととゲームで遊ぶことが趣味です。ファンタジーと悲恋と、人の姿をした人ではないものが好き。 ノベルゲームやイラスト、簡単な動画作成など色々やってきました。小説やゲームについての記事を書いていこうと思います。

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