最初こそ、ひどく驚いたし拒絶したよ。ただ一度来てしまった以上、帰る道がないと泣きつかれて……そばに、置くようになって。すぐに仲良くなって、定期的に雨を降らせてくれる、他に……割と色々、それこそお前に言ったら何をさせてるんだって怒られそうなことまで、あいつは俺の願いを叶えてくれた。
便利なやつだと、思ってたさ。本当にただそれだけだった。
……でも、いつからだろうなあ。好きだと思うようになって、俺の願いが雨のそれから「イヴと一緒にいたい」になって……俺の成長に合わせて、あいつも姿を変えてくれる辺り、ずっと一緒にいてくれるつもりがある、っていうのも理解できた。
だから、俺は。両親が決めた相手と結婚するくらいなら、イヴと逃げようって決めて。なんなら火事になった屋敷ごと、両親を見捨ててさ。焼け残ったものを売り払ったり、たまにイヴに金を作ってもらったり……まあ、全体的に犯罪だが……してもらって、なんとか生きてきたんだ。
だが、な。それでもやっぱり、働く必要はあった。長いこと家を空けて、なかなか帰れないことも多かった。そんな中でも俺を見捨てず、律儀に待ってくれていたイヴは……一人の間ずっと、泣いていたんだ。
「それで、いつの間にかお前が家にいた時も……驚きはしたが、それであいつが寂しくないなら、と思った。だから俺は、そもそも父親なんかじゃなかったんだろう。
……もちろんそれで、お前を深く傷付けたことを……許してくれとは、言わないがな」
「ジェイド……」
何かを口にしたいのに、下手なことを言うわけにもいかず。もう一度「本当に、寂しかったんだろうな」と口にしたジェイドは、ひどく遠い目で言葉を続けた。
……おかしいとは、思っていたんだ。俺のことを深く愛してくれているって確信はあったが、あいつは俺との接触をあまり好まなかった。
理由を訊いてもはぐらかされるが、お前には割とベタベタしている。だからお前の、きょうだいがほしい発言をきっかけに問い詰めた。そうしたらあいつ、泣きながら「子供ができない体なんだ」って言った。
まあある程度、納得はしたよ。ただあいつは、「本当なら俺との子供が欲しい」とも言った。だから多分……俺は、今まで当たり前にそばにいたあいつを。あいつがずっと、そこにいてくれただけだっていうのに……見た目も変わって、一緒に歳を取ってきたあいつを。あいつが俺に合わせてくれていただけなのに……人間みたいに、思ってたんだ。
あとは大方、お前の想像通りだ。だからこれは、俺の逆恨みだよ。分かってたさ、分かっては……いたかった、なあ……