「……とはいえ、僕がようやく姿を現した日だって……君が撃たれて死んでしまったら、君を見て精神を保つことが不可能になるから行ったんだ。
けど……はは、なんでだろうね。成り行きで一緒にいるうちに、すぐ君から離れがたくなって……なんなら君を利用して、この生を終わらせることも思いついて。君の望むまま死ねるならどんなに、どんなに幸せだろうって……」
サイラスが顔を覆う。すきだ、とこぼれたその声が、どれだけの絶望の上に成り立つ感情かなんて、私には一欠片程度しか想像できない。それでも彼が、私という存在にどれほど依存し救われていたのか。それだけは、なんとなく理解できる気がした。
……ああ、そっか。私の願いがなんなのか、サイラスは明言していないけれど……私はずっと、誰か優しくて、私を大切にしてくれる人に「助けてもらいたかった」のか。
そしてサイラスが、私に向けていた笑顔もまた。おそらく「願い主の願いでしか死ねない」彼が、提示した「用事」を円滑に進めるためのものだったのだろう。それが途中から、彼の予想しない方向にズレてしまっただけで。
「……あなたの目論見、叶いませんでしたね?」
「まったくだよ、君のことだから少しは悩むと思ったのに。
……どうせ、いずれ君も……僕を置いて死んでいくんだろう? あれだけずっと、死にたがってたくらいだから」
「本当は……そうですね、と言いたいところですが。
悩んでます、って言ったらどうしますか」
ぎょっとした顔で、サイラスがこちらを向く。私としてはもう随分、前向きになったつもりでいたのだが——やはり伝わっていなかったらしい。
「そもそもイヴに取り込まれかけた時点で、必死に抗ってたんですから察してくださいよ」
「いや……だってあれは、アレクに免じて出てきてくれたのかと……」
「違います。アレクが何か言い出す前に、以前の私なら諦めてました」
「……じゃあ、なんで……」
言わせるつもりかこいつ。しかし本当に、からかっているのではなく理解できていなさそうだ。
ならば仕方ない。彼が心から望む言葉ではないだろうが——せめて、希望になり得るこの言葉を贈ろう。