「ねえ、ジェイド。あなたが待っててくれるなら、わたしはまたきっと……時間がかかっても、どんな形でも。また、あなたに会いにくるよ」
ハッとして、辺りを見回す。甘やかで透き通る、その声の持ち主はどこにもいない。当たり前だ。
……それでも確かに、幻聴の類ではなかった。頷いて、俺はただ空を見上げる。
周りには歓喜の声。言葉通り希望の光が降り注ぎ、この方舟を余すことなく照らしていく。
そうして俺は、首元に下げていた彼女との指輪を握る。イヴはもう、俺のせいで。とうの昔にいなくなってしまったし——俺は山ほど、周りに迷惑をかけ続けた。
だから、償おう。いつかイヴが戻ったら、胸を張ってまた、この指輪を渡すために。
そのために今は、少しだけ。お前はゆっくり休むといい。お前は地獄と言っていたけれど、そんな場所はお前に似合わないから……平和な生活に飽きた頃にでも、また。
ずっとずっと、彼女のアダムになりたかった。その気持ちは今も、胸のどこかに残っている。だからこそアダムが羨ましかったし、憎いとも思っていた。
けれど、対の存在であったはずのアダムではなく。彼女はただの人間を……「ジェイド」を選んでそばにいてくれたのだ。それを感謝するのではなく、驕るなど馬鹿なことをした。
……いつか機会があったなら、二人にイヴに、俺は謝れるだろうか。そして俺たちを生かしてくれたという、名も知らぬ神にも——また。
腹が鳴る。喉が渇いて仕方なかった。ああ、そうだ。生きるとは確かに、そういうことだった。
「すまなかった。そしてずっと……お前だけを、愛している……」